【予感がテーマのオカルトサスペンス】
娘が居なくなった世界は幻のように感じる。
時間も止まってしまったのではないだろうか。
前回レビューした「アリス・スウィート・アリス(1977)」の元になった作品との事で、ドキドキしながら鑑賞いたしました。
2か国語が使用されていて、多言語映画マニア歓喜。
夫ジョン役のドナルド・サザーランドさんてキーファー・サザーランドさんのお父様なんですかー!
親子で俳優されてるなんて知らなかったです。
虫の知らせから始まる冒頭。
写真に写った赤いレインコートの後ろ姿が、零した液体で赤く滲む描写に心を掴まれました。
カットバックの伏線も実験的で斬新です。
感情より理屈を優先する夫。
彼と正反対の妻。
主役夫婦の性格が細かく描かれていたのが印象的でした。
理論を優先した性格の夫が赤く滲んだ写真に胸騒ぎを感じる場面や、サイキック姉妹が語った夫の能力などオカルト的な何かに運命を誘導されて行く過程が淡々と進みます。
遠くを通りすぎる赤いレインコートの人物に亡くなった幼い娘の思い出を重ね合わせる。
「あれは娘ではないか?
娘にまた会えた!」と強く感じる夫。
そのような理屈では説明がつかない事が肯定的に描かれていて個人的に大好きです。
結局、この作品に散りばめられた赤色は物語の結末を予言するモチーフだったということですよね。
道が複雑に入り組んだ冬のヴェネツィアの街と広いラグーンが、心にぽっかりと穴が空いたような夫婦の憔悴した寂しさを表しているようでした。
喪失感と共に赴いた地で、娘の影に翻弄され迷路をさまよいたどり着いた場所。
やっと追い付けたと思ったのに。
娘の死をなぞるような破滅の結末。
悲しみ。その想いは幻想。
永遠に続く走馬灯。
しかし妻にとってこの喪失が新たな人生を出発するきっかけとなった。