きゅうげん

ドーン・オブ・ザ・デッドのきゅうげんのレビュー・感想・評価

ドーン・オブ・ザ・デッド(2004年製作の映画)
4.1
ザック・スナイダー×ジェームズ・ガン!
いまやアメコミ映画の陰と陽を代表する両雄の、意欲的な『ゾンビ』リメイク!


‘00s以降顕著な「走るゾンビ問題」は、モソモソ彷徨う様子の映像化が最早ギャグというのも勿論、何よりも重要なのは作り手がゾンビをどう捉えているかによると思います。
ノタノタ歩きゾンビには、弛緩した退廃的イメージから「死」そのものの恐怖が濃厚に漂う一方で、ワチャワチャ走りゾンビには「死」を超越した新生物的衝撃が恐怖として体現されるのです。

この新たな生命体イメージを重ねる例は、古典的なブードゥー・ゾンビとは一線を画し、また原典である『ゾンビ』以降の延長線上にありながらも、モチーフとしては吸血鬼的な精神性へ立ち返ったともいえるもの。
モダン・ゾンビ映画の始祖たる『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は、言わずもがなリチャード・マシスンの小説『吸血鬼』(改題後『地球最後の男』)の影響下にあり、現在にいたるゾンビ観はいずれもこれに裏打ちされています。
この「吸血鬼≒ゾンビ」というシームレスなイメージは、「死」を克服した高次的・上位的存在として人間が抱く恐怖かつ憧憬、という点で共通しており、その描写の一側面として、身体機能の飛躍を表現するのは理にかなっているのです。
またこれによるゾンビ・アポカリプスとは、復活ーー特にキリスト教的な意味での「レザレクション」あるいは「ボーンアゲイン」ーーを経た圧倒的な存在による新世界の到来がミソであり、本作においてはスナイダー&ガンらしいニヒリズムやナンセンスさが非常にわかりやすく散りばめられています。


……なんて真面目な話を抜きにしても、それぞれのメンバーがだんだん仲間になってく感じは微笑ましいし、息抜きしてる日常パートも楽しそう。
ゾンビ妊婦と悪魔の毒々新生児はめっちゃトロマ感あって大好きだし、ザックの選曲もいちいちナイスですね。特にEDのジム・キャロル『People Who Died』! 『新スースク』でも流れてましたが、ホント最低で最高。
ゾンビ群像劇のニュー・クラシックと言っても過言じゃない、教科書のようなゾンビ映画です。