日欧米 Movie Sabbath
29作品目
英国ハマー『吸血鬼ドラキュラ』(1958)に対するマリオ・バーヴァさんの返答。イタリアン・ゴシック・ホラー。
原案はニコライ・ゴーゴリ『ミルゴロド』収録の『ヴィイ』。原形を留めぬ程の脚色(良い方に)、名前などにその面影を残す。舞台は現ウクライナ、ミルホロド(露語でミルゴロド)。
17世紀、吸血鬼の魔女として
異端審問にかけられ処刑されたアーサ公女、今際の際に裁定をくだした兄一族に呪詛を吐き息絶える。
19世紀、モスクワに向かう途中馬車の故障にみまわれた医師のクルヴァヤンと助手のゴロベック。暇を潰そうと霊廟に迷い込み、突如襲ってきた蝙蝠との格闘でアーサ公女の収められ石棺を、壊してしまう。その時負った傷の血によって、200年の時を経て今まさに魔女が蘇らんとしていた―――。
妖しく深閑とした霊廟。
荘厳な居城に、なかを飾り立てるオブジェや意匠。暖炉好き。監督の親父さんが手掛けたという、アイアンメイデン風の悪魔の鉄仮面。霧煙る中を走る絢爛な馬車。美術も見事です。不気味なムードが良い。
冒頭からの焼きゴテ、仮面を叩き込むなどの拷問ショックシーン。後のイタリア映画の方向を示唆した元ネタの宝庫といわれるだけあります。
個人的には十字架でおでこ火傷のシーン『フライトナイト』(1985)の元ネタはここかと感慨に耽ったりしました。冒頭の焼きゴテが効いてる。
お城の隠し扉や通路、落とし穴など浪漫溢れる内部構造。
魔女とヒロインの二役を演じた、ツンとしつつ凛としたバーバラ・スティールさん、映画にばっちりハマってる気がする。本人的にはあまりやる気無かったぽいけど。
もうちょっと観たかった気もする。
美醜のコントラストはまさにイタリアンテイスト!
オーディオ・コメンタリーより
「竜退治で有名な聖ゲオルギオスの絵だ。アーサが処刑されたのが、ゲオルギオスの日の日曜日で、「ブラック・サンデー」という英題がつけられた」
この聖像画に吸血鬼の退治方法が記されており、割と陰惨な方法が取られている。
(対抗意識?)
【自分用MEMO】
『ゲオルギオスの日』の項目よりWiki抜粋
『ゲオルギオスの日(ゲオルギオスのひ)は、聖ゲオルギオスを記憶するキリスト教の聖名祝日。イギリスやスペインなどではゲオルギオスが殉教した命日とされる4月23日に祝われる。正教圏では5月6日(ユリウス暦4月23日)[注釈 1]に加えて秋にも祝日がある地域もあり、グルジアでは11月23日、ロシアでは12月9日に、より大きく祝われる。このほか地域によって、また復活祭との関係によって、これ以外の日が祝日とされることもある。ブルガリア(5月6日)およびグルジア(11月23日)では、ゲオルギオスの日が公休日である。』
同、ゲオルギオスについて
『聖ゲオルギオス(日本のカトリック教会では聖ジェオルジオ[1][2]、正教会では聖大致命者ゲオルギイ[3][注釈 2])は古代ローマ帝国の末期、303年4月23日に殉教したとされている聖人である。ゲオルギオスはローマの軍人であり、ドラゴン退治の伝承で知られている。
聖ゲオルギオスは、イングランド・グルジア・カタルーニャ・アラゴンといった国や地域、モスクワ(ロシア)などの都市、軍人・農民などの職業の守護聖人とされている。また、カトリック教会では救難聖人として崇敬されている。』