画面の色彩がとても好きな映画。それだけでも充分エロティックでもうお腹いっぱい!って感じなのだが、特筆すべきは卓越したメタファーともいうべき映像表現である。
当作は不倫の映画(といった安っぽいカテゴリに入れるのも忍びないが一応話の筋としては不倫がメインだ)であるにも関わらず、二人が接触し合うシーンは殆ど出てこない。代わりに各所に食事をとるシーンが収められている。
食事という大したことのない日常の動作が、丁寧に描かれることで官能的なシーンに見えてくる。肉体関係の有無に関わらず、夫婦以上に夫婦のような二人。男女の食事がこんなにセクシーに見える映画他にない。
二人の本来のパートナーが具体的に描かれない演出も良かった。
他にも、二人がすれ違う時の目線の捉え方等、映画監督というより画家に近い感性を匂わせる王家衛作品。
濃密な香港の空気が恋しくなった。