ペコ

KAMIKAZE TAXIのペコのレビュー・感想・評価

KAMIKAZE TAXI(1995年製作の映画)
5.0
ああ、これだ。今、移民問題や差別に揺らぐこの世界の中で、私が求めていた理想の答えはこれだったんだと改めて思い、なぜ現実はこうも分かり合えないのだろうと涙してしまいました。

神風特攻隊やその他諸々の戦犯問題についてを当事者でない者がテレビでベラベラ意見している腹立たしさや、暴れたいからヤクザに入ったのにヤクザの縦社会的な風潮に嫌気がさした若者が特攻隊気取りで復讐していく爽快さ、さらにはそこに日系ペルー人のタクシーの運ちゃんが本当のカミカゼとは何かを解くユーモラスな雰囲気が絶妙なハーモニーを奏でた奇跡のような映画です(私にとっては)。

ヤクザや戦争は怖いし嫌だと思うのが普通ですが、それを実行する末端の人間の本音は様々なのだとこの映画を見てしみじみ思いました。矢島健一やミッキー・カーチスのようにそれが自分の生きる術だから仕方なくおこなっていた者もいただろうし、高橋和也のように暴れたいという自分の衝動のままにおこなっていた者もいたでしょう。しかし、本当に唾棄すべき対象というのは、それを外野からただ眺めていただけのくせにあーだこーだ言って自分の利益に還元してしまう輩なのだと、そう言い切っているところが最高にカッコいい。また、アグレッシブな女性の描き方など、ヴァーホーヴェン作品に通ずる部分が多々あると感じました。
しかし、計算と偶然、その曖昧な境界線上ギリギリで綱渡りしているような緊張感はちょっと他ではなかなか味わえない希少なものだと思います。支離滅裂ではありますが、何か役者の演技に嘘が見えなかったり、いかにもなコテコテの演出が一段突き抜けてめちゃくちゃカッコ良く感じられたり。(あと、どことなくホモセクシュアルな何かが漂っているのもこの作品の特徴か。。。)
フィクションだから人は簡単に死ねるし、本音も言える。偉大であると共に奇跡のような、この映画の存在自体があまりにも私の想像の範囲外であるため、ちょっと信じがたい驚くべき作品でした。
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