odyss

スープ〜生まれ変わりの物語〜のodyssのレビュー・感想・評価

3.0
【先入観を排して見てみれば】

「あの世」を描いた、かなり論議を呼んだ作品です。たまたま見る機会を得たので、なるべく先入観を排して鑑賞するよう努めました。

で、結論から言うと、傑作ではないが映画としての面白さはそこそこある、ということですね。

妻に離婚され、仕事もできないダメ中年男(生瀬勝久)が中3の娘(刈谷友衣子)と暮らしています。職場ではまだ若い女性社員(小西真奈美)の下に格下げされる始末。ところが女性社員と二人で仕事に出ていて落雷に遭ってしまい、あの世へ。あの世でもいろいろあるのですが、前世での記憶を残したまま生まれ変わり、気になる娘の人生を見守る、という筋書きです。

生瀬勝久がダメ中年男の人生を巧みに演じています。ワタクシ的な価値観からすると、万引きしながら生意気な口をきいている娘にビンタをくらわすのは当たり前で、私ならさらに自宅に帰っても厳しく叱責するところですが、ダメ中年男はひたすらビンタを反省し娘の意向をうかがうばかり。まあ、だからダメ男なんですけどね。

女性社員(小西真奈美)にもさんざん罵倒されていますけど、私だったら堂々と反論するところ、ダメ中年男はぬめっとした調子で答えるばかり。いわゆる「気持ち悪い」男ですよね。こういうタイプって、女性はもちろん男性からも嫌われるもの。そういうどうしようもない男が、生瀬勝久によく合っています。

他方、生意気な娘の役を演じる刈谷友衣子が可愛い。私だったら前述のように生意気なのでビンタを食らわしますが、食らわした後抱きしめたくなる可愛さ。将来有望そう。

他に、松方弘樹などの中高年も、橋本愛などの若手も、キャストはすごく豪華です。「この人がこれだけの役?」と思うケースも。勿体ないですね。蛇足ながら、この映画を見ていて橋本愛ってこんなに歯並び悪かったっけ?と思いました。

後半はかなりご都合主義的に筋書きが展開しますが、邦画にはありがちということで。

もちろん、突っ込みどころはいくつもあります。
例えばあの世。あの世は死んだ人が行くところですから、必然的に老人の比率が圧倒的に高いはず。なのにどういうわけかこの映画のあの世は中年や若者が目立ち、よぼよぼの老人はあまり出てきません。この世の盛り場と変わりないのです。老人はあの世でも隅に追いやられているのでしょうか(笑)?

また、出てくるのは日本人ばっかり。あの世でも国境は厳然として存在しているのでしょうか? 在日朝鮮人や中国人は死んだらどうなる(笑)?

というようなイチャモンは置いといて、一種のおとぎ話として見れば、2時間そこそこ楽しめます。

なお、この映画を「本当のあの世」を描いた作品だと思っている方には、『丹波哲郎の大霊界』という映画(シリーズで2作あり、ただし私は未見)があることをお教えしておきます。どっちが本当の死後の世界を描いているのか、見比べて判断されては(笑)?
odyss

odyss