りっく

ハロルドとモード/少年は虹を渡るのりっくのレビュー・感想・評価

3.8
少年とおばあちゃんの純愛映画というなかなかの設定にもかかわらず、周囲とうまく関わることができないふたりがそれぞれ死と生のシンボルとして葬儀で出会い、世間のルールを無視し心の純度を高めていく繊細なタッチが見事。

自殺ごっこが趣味で、物質的には豊かだが、母親の注目を集めようと演じる様が肉体的ではなく精神的に痛々しい。そんな狂言自殺に同調する相手がお見合いで見つかっても、それでも彼は演じることや母親が敷いたレールの上を走ることをやめ、生に自由に目覚めていく。その軽やかさや優しさが心地よく、気持ちがいい。

キャメロンクロウ、ガスヴァンザント、アレクサンダーペインなど、本作の影響を受けた映画作家は数多くいるだろう。弱い人間たちに生きる勇気を与え、社会のしがらみから解放してくれる普遍性がある。
りっく

りっく