初見2024/3/12
10ヶ月ぶり2回目。前は普通に面白いと思ったのだが今回は意外と複雑な映画だということに気づく。主人公のジポは明言されないがおそらく知的障がいを持っていて、その彼が犯した過ちについてどれくらい人は許すべきかという話なのだが、ジポがしでかしたのはアイルランド独立派の仲間のタレ込みだったため裁かれる基準は独立派組織にあるのだ。なんだか左翼の内ゲバみたいな雰囲気を感じた。
要はジポに責任能力があるのかという話な気がしてくる。好きな女に貢ぐための資金調達で昔からの相棒フランキーをサツに売るという行為自体は大いに問題ありなのだが、フランキーの遺族はジポのこともよく知ってるから意外と許してるところが興味深い。一方組織としては仲間を売った奴を処刑せねば示しがつかないのでジポを殺らねばならない。ラストのくだりは見る人によっちゃ噴飯ものだと思うが赦しがテーマなので仕方がない。テーマでいうと直前に見た「戦争と母性」ともつながる。
とここまで書いたことが描かれるのはほぼ終盤で、物語の大半はジポの憐れな散財を見続けることになる。ジポが浅はかすぎるし、金欲しさにたかる奴が出てくるし、全体的に演技がオーバーで冷めるし、やや辛いところがある。それでも1935年にしてバキバキのノワール調の映像が面白いので退屈はしない。主演のヴィクター・マクラグレン、いいシーンとそうでもないシーンの差が激しい気がする。ヒロインに引っ張られて大げさになりすぎてる時がある。