けーはち

Mのけーはちのレビュー・感想・評価

M(1931年製作の映画)
3.9
ベルリンで少女ばかりを狙う凶悪な連続殺人犯が出没。このままだと商売上がったりなので、市民や暗黒街の住人たちも自力で殺人犯を捕らえようと動き出す。序盤は現代人の目で観るともっさりとしているようだが、やがて警察幹部とマフィアらが同時に動き出す様子を並行して描くクロスカッティング、街の様子からカメラがグイーッと動いて室内の様子に繋ぐワンカット撮影、カメラアングルや演出など、トーキー映画が世に出て数年の1931年にして目を見張る完成度を誇る。そして狂気とともに「ペール・ギュント」の一節を口笛で吹きながら殺人を犯す男の逃走劇と彼が捕らえられてからの人民裁判、狂騒の中で私刑が下されようとする流れは、当時のナチス台頭を風刺したものと言われる。フリッツ・ラング監督によるサスペンス&スリラー映画の草分け的作品は、単純な勧善懲悪でなく痛烈な社会派作品でもあったのだ。