キミシマユウキ

ONCE ダブリンの街角でのキミシマユウキのレビュー・感想・評価

ONCE ダブリンの街角で(2007年製作の映画)
3.8
ダブリンのストリートミュージシャンである男とそこで出会った花売りの女。2人は共に恋に破れて傷心中であったが……

『はじまりのうた』の
!!ジョンカーニー監督!!
がその才能の片鱗を見せ始めた音楽映画。
公開中の新作『シングストリート』が好評なのでこれを機に鑑賞。

「"Miluju tebe" 」

荒削りで低予算だが、それが逆にイイ味を出している素晴らしい音楽映画。
『はじまりのうた』を鑑賞した時も思ったのだがこの監督は自身も元ベース奏者ということもあり、音楽を作っていく過程を見せるのが非常に上手い。
意味のないただのメロディに切ない歌詞を乗せて曲にしたり、アコギだけの音にピアノを重ねるだけで雰囲気をガラリと変えたり…
作曲まではしたことがないが、自分も軽くバンドをやってたりしたので曲が完成していくまでのあのワクワクを映画で感じることが出来る嬉しさといったらない。
あまりの低予算さでストリートでの演奏シーンの聴衆は撮影してることを知らない一般人だったり、部屋が俳優のプライベートのものだったりするのもストリートミュージシャンの物語を見ているという点ではプラスに働いただろう。

主演の2人は実際に一緒に活動しているミュージシャンらしい。俳優経験もほとんどない俳優と経験ゼロの女優だったがそこがまた自然で良かった。
今回の楽曲すべての作曲&演奏を行っているので思い入れも強いだろう。
この撮影中実際に2人は結ばれたというロマンチックなお話も知っておくとよりこの映画を楽しめるかもしれない。

「まだ彼を愛しているのかい?」

と男が聞く。彼女はチェコ語で

「"Miluju tebe" 」

と答える。この意味は男には分からないし、映画内で敢えて訳は出てこない。
しかし見終わったあとにコッソリ調べてみるともう1度見てみたくなるかもしれない…

音楽映画好き、バンドや作曲をやったことのある方、そしてストリートミュージシャンの演奏を聴くとふと脚を止めてしまうような素敵な感性をお持ちの方にはオススメの作品。