やわらかい風
パステル調のフィルムワークがやさしいホノカアの町。
のんびりとした人々。
虹。
おいしいごはん。
「かもめ食堂」の荻野直子作品にも似た空気感のようでいて異なるのは、本作にはゆるやかな時間が流れているところだろうか。底抜けに明るくおだやかな日常のなかで、そこには拭えない衰退と孤独と老いの影がある。
「ハワイハワイと来てみたけれど、お郷恋しや、つきのにじ」
青柳拓次の挿入歌は、異邦人としてやってきたレオの歌のようでもあり、戦前サトウキビ製糖産業の労働者としてハワイに渡った日系移民の人々の歌にも思える。
日系移民の子孫であろう登場人物たち。
コイチさんの生きてきた人生、ビーさんの孤独、引退を考えるバズ。
ゆるやかに衰退してゆく町の風景のなかで描かれる変わらない愛や前向きさ、想いやりの深さが胸を打つ。人を愛おしく感じる映画。
これは、良い映画です。