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赤い砂漠のleylaのレビュー・感想・評価

赤い砂漠(1964年製作の映画)
3.9
ミケランジエロ・アントニオーニ監督のカラー初作品。色使いと映像にこだわりがみっちり!

交通事故がきっかけで精神を病んでゆく主人公ジュリアーナ(モニカ・ヴィッティ)。彼女の不安定で孤独な精神世界を、映像とサウンドで表現している。ノイズのような耳障りな機械音が不穏に響く…

冒頭で主人公が知らないオジさんから食べかけのパンをもらって食べるというギョッとするシーンから始まり、ラストも冒頭と同じ服、同じ場所で終わるところに恐怖を感じました。彼女はこの孤独と空虚からずっと抜けられないのだと。

公害問題、環境問題が叫ばれている時代だったのか。工場の煙、汚れた海水、曇天の空、靄に煙る港…気持ちまでダークになる灰色の色彩に、赤や青、白、黄色など鮮やかな色を差し込んでくる。一瞬ピンクになる部屋、昔話の海の美しさなど、色彩マジックに溢れてました。

物質的な発展を遂げるほど人間の心が病んでいく、(当時の)現代社会を表している作品なのかな。最後に唐突に入る「FINE(END)」の文字は、地球の終わりを示す絶望のFINEに思えてしまった。
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