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ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会いのodyssのレビュー・感想・評価

4.0
【オペラ生成の過程が興味深い】

この映画、モーツァルトやクラシック音楽にある程度親しんでいる人にはかなり楽しめると思いますね。逆にクラシック音楽に無縁な人にはよく分からない映画でしょう。

冒頭、ヴェネツィアの街を石像が運搬されているところを見ただけで、『ドン・ジョヴァンニ』を知っている人は一気にオペラ的な世界に引き込まれていきます。

台本作家ダ・ポンテと作曲家モーツァルトの出会いによってこの傑作は生まれたのですが、その創作のきっかけが興味深い。女たらしであるドン・ジョヴァンニの伝説は昔からあり、それを素材にしたオペラもいくつか作られていたわけですが、その素材にダ・ポンテとモーツァルトは新しい生命を吹き込もうと努力する。そこにダ・ポンテ自身の恋愛と、実在の女たらしであるカサノヴァが絡んでくる。実にたくみな筋書きです。

オペラのシーンもよく出てきて楽しいし、歌手やその他との関係でオペラが徐々に生成していく過程が、この映画の最大の見どころ。できあがったものを堪能するのもいいけれど、できていく途上の様子こそ、芸術を知るための最上の手段となるのであり、この作品はそういう急所を見事に描き上げているからこそ、クラシック・ファンにはこたえられない映画になりおおせたのだと言えるでしょう。
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