石川

どですかでんの石川のレビュー・感想・評価

どですかでん(1970年製作の映画)
3.0
あまり楽しくなかった。
面白かった場面もたくさんある。すごいエネルギー。でもなんか楽しめなかったな。

電車好きの子が気分は車掌さんでエア電車を走らせる。
その際の効果音の音ハメが奇妙でとても面白い。この少年はこんな気分なんだろうきっと(笑)
もしかすると少し頭のおかしい子なのかもしれない。
物語にはほとんど絡まない。群像劇の合間合間に現れ、「どですかでん、どですかでん」と口で電車の音を鳴らしている。

絶望する人に言葉巧みに生の喜びを与えるシーンが何度かある。
これはどん底っぽいなと思った。
舞台も時代こそ違えど瓦礫に囲まれた底辺暮らし、最下層の人間たちの生活の中での喜怒哀楽がどん底を思い出させる。

浮浪者親子の物語が印象深い。
父親はいつも理想の家を夢想している。それはまるで現実逃避をしているようだった。
まったく現実を生きていない。食べ物を取ってくるのは子供。体を壊しても変なプライドがあるのか周りの人に頼ることもせず理想の家を妄想する。
最後の最後でようやく自分で食料を貰いに出たが結局手遅れになってしまった。
最後まで妄想をやめなかった。どれだけ貧しくても夢を見るのは自由なのだが、夢を語るだけで何もしないのは、つまり現実を諦めているようで心苦しかった。

ラストは電車好きの少年の車掌ごっこで終わる。どですかでん、どですかでん。
人生がこんなに辛いなら、少しくらい頭がおかしいくらいが幸せなのかもしれないな。電車の少年は楽しそうだ。
これは生きものの記録を思い出した。










電車好きな子。街の様子。様々な住人。真面目そうな職人のおじさん。飲んだくれ。顔の筋肉が引き攣ってしまう男と性格の悪いその嫁。几帳面な職人と浮気性な嫁。酒飲みの男と内職に勤しむその親戚の娘。優しい酒屋。理想の家を語る浮浪者親子。無口な謎の男、まるで目が見えていないかのように焦点が合わない。

1.街の住人たちの生活がそれぞれ個別に深掘りされる
浮浪者の息子、色々回って残飯を貰う。父親は理想の家を妄想する。おじさんの家に泥棒が入る。仕事道具を盗もうとする泥棒を引き留め、金ならこっちだと財布を渡し次は玄関から来なさいと言う。内職をする娘はほとんど寝ずに働いている。電車好きの子は頭がおかしい?無口な男の所に謎の女が訪ねてきて、仕事を手伝う、しかし会話はない。飲んだくれ夫婦が亭主を交換していた、どゆこと。

2.どの家庭もこれ以上どうしようもなく立ち行かないような雰囲気がある
毒薬を飲んで死のうとする人。飲んだはいいけど死にたくなくなって解毒剤を求める。そもそも薬は嘘だった。酒飲みの男が親戚の子に欲情して強姦する。浮浪者親子が火を通して食えと言われた鯖をそのまま食べて当たってしまう。顔面が攣ったおじさんが客を連れてくるが妻が横暴な態度を取り客が怒って喧嘩になる。無口な男は何も話さない、過去に浮気か何かがあったらしい。酔っ払いの親戚の子、勝子が妊娠してしまう。

3.各住人の結末
浮浪者親子はいよいよ食当たりがひどくなってきた。勝子が酒屋の男を刺し逮捕される。無口の男は元嫁を許さない。元嫁は出て行く。結局一度も口を利かなかった。酒屋の息子は助かる。酔っ払いの男は出頭を命じられ、罪を恐れて逃げる。浮浪者の子供が死ぬ。飲んだくれの職人が各々の家に帰る。浮浪者父が息子の骨を埋める。電車の少年、どですかでん。終。
石川

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