フクイヒロシ

激動の昭和史 沖縄決戦のフクイヒロシのレビュー・感想・評価

激動の昭和史 沖縄決戦(1971年製作の映画)
5.0
戦後26年目に公開。丹波哲郎、仲代達矢、田中邦衛、地井武男、加山雄三らが戦争を風化させまいと演技を超えて地獄の沖縄戦を描く。

DVDにはなってるけどレンタルでは出てない。

これ、『ハクソーリッジ』もあったことだし(観てないけど)『沖縄決戦』劇場で公開できませんかね、来年の夏あたり。
『ハクソーリッジ』で日本側が描かれてないと批判するなら、この『沖縄決戦』観るべきでしょ。


以下、思いつくままに。



ひとつのカットがすごく短くて話がポンポン進む。
実際の映像を交えながらも、ものすごくお金かかってると思う。

これだけ時間と労力かけて、爆薬と人気俳優とエキストラ使って撮影したなら、もっとじっくり観せたいだろうに、疾走するごとく進む進む。

アマゾンプライムのHDレンタルで観たんですが、画質が精彩。46年も前に撮られたものとは思えない。




「これ以上敵を本土に近づけてはならん。どんなに犠牲を払っても沖縄以南で食い止めろ」という大本営の命令から、沖縄をまるごと航空母艦とする計画が進められる。

沖縄各地で軍は講演会を開き、県民の協力を仰いだがそのたびに「これから米軍が沖縄を制圧しにくるんだ…」と県民を恐怖に落としいれるばかりだった。

↑ここにまずリアルさを感じました。人間の感情はそんなに簡単には操作できない。しかも昔は本土の人間は沖縄県民に差別意識があって人間とは見ていなかったわけで、本土の人間からそんなこと言われても、ねえ。。
最終的には、思想的にも日本軍に飲み込まれて集団自決へと向かうのですが。

で。
沖縄決戦を前に、児童と婦女子を本土に疎開させるため700名を載せた対馬丸が本土に向けて出港。
軍人「危ないので甲板には出ないでくださ〜い」
幼児「は〜い!」
軍人「ゴミを捨てないこと!」
幼児「は〜い!」
まるで幼稚園のような雰囲気で、幼児たちがもうほんとに無邪気でかわいい、そして軍人もちょっと顔がほころんでいるような描写をしてから、対馬丸、米軍に発見され撃沈。。
この対馬丸のシーン全部で30秒くらいだと思う。




「本土のヤツの考えがハッキリわかった!沖縄は勝手に闘って勝手に死ねばいいと思ってやがるんだ!」丹波哲郎

14歳から16歳の少年兵による鉄血勤皇隊
女子学徒隊のひめゆり隊
特攻隊の菊水作戦
などなど、沖縄戦の終結まで丁寧に段階踏んで描いていく。



米軍からの攻撃を逃れ日本軍は南へ移動することに。
病院も移動するが、連れていけない重症患者(約2000名)は自決。
軍医から渡された青酸カリを飲んだり、カミソリで手首切ったり。
ちなみに青酸カリを配る軍医は加山雄三。


「デテキナサイ。オトコハハダカデ、オンナハシロハタヲモッテ。イノチハホショーシマス。デテコナケレバ、バクダンヲナゲマス」
ドーン。
爆弾を投げ入れられた防空壕の内部を観たのは初めて。。


田中邦衛、地井武男、丹波哲郎、仲代達矢、加山雄三、大空真弓、酒井和歌子…などなど、おなじみの顔も出てくるし、映像が精彩だから、身近に感じながら観ました。

昔の映画だから画質が荒くて暗いものかと思っていたけどすごく映像が綺麗。

149分、ぶっ続けで観た。。
途中「休憩」という文字がバーンと出るのでその時になんとなくトイレ行きました。
(劇場公開時休憩が入ったんでしょうね。そのままDVDに納める豪快さ。)

前述の通り、テンポが良くてカットに緩急あって映画として面白い。
あと驚くことにコメディシーンも結構ある。
明らかにコメディ要員としての地元の女性や、ブラックコメディのような切腹シーンなど、全体的に悲惨なんだけど、必要以上に悲惨に見せないというか、人間性を失わないような印象だった。

こういう映画でこの感想をいうのはとても憚られるのですが、多くの人に観て欲しい!!!という気持ちも込めて言いますと、「すごく面白かったよ」。