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20世紀少年<最終章> ぼくらの旗のTorichockのレビュー・感想・評価

1.3

「20世紀少年 最終章〜僕らの旗〜」

そして、伸びに伸びきった麺を容器の中に無理やりねじ込んだ結果、スープも溢れ出し、具も飛び出し、残ったのは伸びきった麺とカップの底に沈んでた一輪のナルトだけのような最終章。

常盤貴子演じるユキジが放ったセリフ、
"心の中で、子供じみた遊びだと思っていたんでしょ?"
これは、20世紀少年という実写映画化に関わった全ての役者に問いかけた、常盤貴子からのメタ的なメッセージでした。そのシーンしか出てない高嶋政伸が泣いて頷いていたんだから、三部作に関わった役者さんたちの心の表情は、絶望の表情でしょう。
映画的なツッコミどころは挙げるのは、もう楽しい域に来ています。
なぜ、空から殺人ウィルスが撒かれるのに、野外フェスをやるのか。
なぜ、空飛ぶ殺人ウィルスを詰んだ飛行物体を、空中で撃ち落とすのか。
なぜ、無駄にヨシツネで一回ミスリードを取ろうとしたのか?
なぜ、ケンヂは野外フェスがあることと場所を知っていたのか?
なぜ、世界を救うためのワクチンを、夏祭りの事務局的なテントの大きさで、ワクチンですよー!と配ってるのか?
そしてなぜ、こういう様々なツッコミどころや、どうしようもないところを、映像化するときに制止しなかったのか?きっと、真面目に作ってないんでしょう。

その曲が世界を救うなんてあり得ないくらいダサい曲、"ボブ・レノン"にみんなが陶酔している姿は、"ともだち"を信仰する人間となんら変わりはないし、そんな曲を堂々と自分の実写化映画に使ってる浦沢直樹さんの自惚れにもドン引きします。
ラストしーんで、バーチャル世界でカツマタくんに謝罪するのはいいとしても、バーチャル世界はパラレルワールドでもタイムスリップでもないから、謝ったところで現実は変わりませんよね。
なのに、それをさも良いこと気に撮り、あまつさえ世界も小さなことで良い方向に変わる、みたいな終わり方にしたのがすごく嫌だし、どんだけ自分に甘いんだよ?と思いました。
そもそも、ケンヂが"ともだち"を作った原因なのに、ケンヂがヒーローになり、ケンヂが謝って、ともだちが許して終わるってなんだよ、それ。
そう考えると、この原作自体とても嫌な話に思えてきましたし、この映画で脚本も担当し、あのクソダサい曲を恥も外聞もなくヒーロー賛歌にしてしまう浦沢直樹さんとは、そりが合わないんだと思いました。

さて、この映画の製作費は60億円。
恐ろしいほどの無駄遣い、世の中にはまだイージーマニーが転がってます。
キャストは豪華かもしれませんが、カップヌードルさえまともに作れない人たちが、高級食材を持て余し、全部ねじ込んで溢れさせてしまった本作、テーブルの上に落ちた香川照之(ヨシツネ)の出っ歯を考えてみてください。
浦沢直樹氏の自己愛に溺れた嫌なところを炙り出し、渡辺雄介氏のガッタガタの脚本能力をあらわにし、自己の映画への愛さえ偽物だという正体を晒してしまった堤幸彦氏の手腕はお見事でした。

この映画を思い出すと、去年の"ルパン三世"は良く出来た映画でした。

次は"BECK"を口撃だい!
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