このレビューはネタバレを含みます
1971年にイタリアとフランスでつくられたルキノ・ヴィスコンティ監督作品。老作曲家が求めた死出の旅を神話的に描いた傑作人間ドラマ。さらには疫病物でもありましたね。
本当は3月に見る予定だったのだけど、せっかくだからその前に原作を読んでみようと図書館に予約したら新コロで休館しちゃってね、やっと再開。原作本は薄い本にもかかわらず濃厚な芸術論であり作家論でした。
さて、前に見たときはマーラーでお腹一杯で、勝手に老人が美少年に魅了される同性愛色および小児性愛色の強い映画だと思い込んでいましたが、今回ちょっと印象が違ったなぁ。そりゃヴィスコンティとトーマス・マンだもん何度でも味わえるわな。
おもしろかった! 小説を読むと良くわかりますが、ベニスとは死の街なのですねぇ。有名なゴンドラを棺桶に例えていたりねぇ。コレラが蔓延していて病院は患者さんがあふれているんだとか。もう健康な人が住む場所じゃないんだわ。
つまりはもうベニス入りしたときには、主人公ったら死んでいるんでは? だってなんかもう夢っぽくね? で、で、で、例の美少年については、若き日の自分を見ているんだわ。
そこにヴィスコンティらしい「美と醜」というテーマが乗っかってる。あたしは老いにも美を感じますけどねぇ。しかしヴィスコンティには許されないんだろうなぁ、あの最後のメイクったら酷いもんな。