ドナウ

炎628のドナウのネタバレレビュー・内容・結末

炎628(1985年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

反戦争なのか戦意高揚なのか判断しかねる悲劇と熱狂の両輪。爆撃や掃射のあの迫力はちょっと今まで見たことない。爆音と衝撃波で耳をやられ、言葉はくぐもり、音は潰れノイズと入り混じったサイケデリックな音。戦争という非日常と日常を或いはファンタジーのように幻想的に描いたあの虹。そんなこんなで個人的にはドラッグムービー的な側面も。多分僕の村は戦場だったとか裁かるゝジャンヌを下敷きにしたんだと思うけど…特に後者を見たときに感じた顔のアップの多用と火炙りとか近いなと思った。見る者の心をへし折ってきた虐殺は人々を家屋に押しこめた後も一向に話が進まず、生々しい人の狂気と悪意を垂れ流し、処刑は簡単には終わらせまいとじわじわと執拗に嬲りいたぶるように丁寧に見せつけてくる。沸々と湧き上がる感情が爆発したヒットラーへの射撃は一発撃ち込むごとに記憶は逆転し、破壊はまるで再生しているよう。獣のように呻きながら何度も何度も引き金を引き、時を遡り現れたのは赤子のヒットラー。子どもから全てが始まる…しかしフリョーラはその子を撃つことは出来なかった。

とにかくノイズが印象的で、悲鳴笑い呻き歌虫の羽音耳鳴りの一つ一つが顔に刻まれたシワのよう…と同時にやっぱりロシア音楽は素晴らしい。鳥の巣を壊したフリョーラも同じく破壊者である。
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