ドナウさんの映画レビュー・感想・評価

ドナウ

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殺しが静かにやって来る(1968年製作の映画)

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雪降る西部劇のカルト率…たしかルチオ・フルチの荒野の処刑の終盤も雪景色だった気がする。法も正義も裁きも不公平で不条理な世の中で、復讐の無意味さを最悪な形で突きつけるラストとダメ押しの掟破りの煽りまで完>>続きを読む

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

近未来的な側面と香港の猥雑な町並みがデジタルとアナログの対比ようで…というよりもただただあの景色が好きだった。

魂と記憶を持った人形は人間たり得るのか。機械は記録として残し、人間は記憶として留める。
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MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

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ブンミおじさんの森からかなり時間が経ってしまったけどようやく見た。相変わらずの土着的なファンタジーと固定カメラの長回し、けれどリズム感はよくボケ~っと見ていられてしまう。自然と人間の共存と対立、地球の>>続きを読む

狂い咲きサンダーロード(1980年製作の映画)

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ゴキゲンなロックンロールに乗せてやり場のない感情と破壊衝動と満ち溢れたアシッドな愛。バイクの閃光や節々に見え隠れするエッセンス、ここからAKIRAや鉄男に繋がっていくのかなんて思った。終盤現れるオーバ>>続きを読む

散り行く花(1919年製作の映画)

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シャイニングの斧の引用元と言われる作品で、見てみるとなるほどリリアン・ギッシュのサイレントならではの大仰な演技がシェリー・デュヴァルのヒステリックと重なる。斧の方はやみくもに叩きつけているだけで言われ>>続きを読む

カンフースタントマン 龍虎武師(2021年製作の映画)

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香港功夫の始まりから絶頂期、そして衰退、現在の動きまでを追ったドキュメンタリー作品。ブルース・リーやジャッキー・チェンの現代劇辺りからのギアが上がったアクションもいいけど、それ以前の丁寧にリズムよく動>>続きを読む

トーク・トゥ・ハー(2002年製作の映画)

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なにで見たのかさえうろ覚えで手がかりのなかったサイレント映画の正体が思いもよらず判明した。小さい男が女性器の中へ入っていくというシュールなものだけど、どう考えてもサイレント期のものじゃないよなぁと思い>>続きを読む

紅いコーリャン(1987年製作の映画)

5.0

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エル・トポの手足のないマスター二人を中心に据えたショット、ひろしまの爆心地を彷徨う山田五十鈴、そして本作のジャケットになっている紅く燃える家族三人が現在の私的圧倒的人物像3選。

原作は未見。日本人的
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田舎の日曜日(1984年製作の映画)

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印象派絵画のような自然と田舎の牧歌的な雰囲気に薄っすらと影を落とす死が不安や緊張を感じさせる。老人が静かに老いを見つめ、他愛のない日常や些細な出来事を噛み締め、死を目前にして今更何を変えられるわけもな>>続きを読む

バタリアン(1985年製作の映画)

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B級作品の意図せずに生まれたであろうツッコミどころを見て笑うっていうのは、毎回これはどこまで狙ったんだろうと不思議に思う。役者の大仰な演技とか、ネームドゾンビのデザインは狙っているんだろうと思うけど、>>続きを読む

コブラ・ヴェルデ(1988年製作の映画)

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ヘルツォーク✕キンスキーを見ていると、どうやってこいつを痛めつけてやろうか…という監督の思惑が感じられて「キンスキー、我が最愛の敵」も見てみたくなった。この人は動物を際どく使っていて中でも驚いたのが、>>続きを読む

奇跡の海(1996年製作の映画)

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第一章始まりの一枚絵、これテオレマだよなぁと思いながら…。開放者のヤンとマグダラのマリアのベスと聖母のドド。服は抑圧(禁欲)と開放、鐘は神と恍惚の象徴、ヤンはベスの服を一枚ずつ剥ぎ取り彼女を天国へと誘>>続きを読む

シュトロツェクの不思議な旅(1977年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

この監督にとってフリークスとは何だったのだろう。他の作品にも弱者が登場するが彼らへの眼差しは厳しく冷たい。それは愚か者のように馬鹿にしたり差別的に描かれているように感じる。ブルーノ・Sの朴訥とした佇ま>>続きを読む

子供たちの王様(1987年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

文革がテーマとは思えないほど優しく穏やかな眼差しと、この世のものとは思えない程幽玄な映像と色彩。シシ神やトトロが今にも現れそうな幻想的な世界で山奥の村にやってきた教師と子どもたちの触れ合いと葛藤を描く>>続きを読む

王は踊る(2000年製作の映画)

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脚。

太陽は昇り、沈む。軽やかに踊り跳ね回るようなバレエとは違う威厳を湛えた重厚な宮廷バレエは衣装や小道具も変わっていてまさに輝く太陽のよう。孤独さを感じ芸術を愛する宮廷音楽家リュリとルイ14世は意
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月曜日に乾杯!(2002年製作の映画)

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人の営みは変わらない。田舎も観光地もそこに暮らす人々は煙草をふかし絵を書き歌を唄い月曜になれば工場へと出かけていく。覗きもするし唾も吐くし盗みも働く…ノンシャランと受け入れながら。ゆっくりと進む時間と>>続きを読む

SOSタイタニック/忘れえぬ夜(1958年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

タイタニックは未見というのが私らしく天邪鬼である。今作は一見地味ではあるものの細部ににこだわり史実に忠実、これが事実ならほとんど人災。船がイギリス、資本主義の権化というか上流下流に無慈悲な隔たりがあっ>>続きを読む

鶴は翔んでゆく/戦争と貞操(1957年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

戦争によって引き裂かれる男女、ひまわりやシェルブールの雨傘が思い浮かぶけど圧倒的にこれが好み。カチューシャが流れる映画はそれだけでいい。冒頭流れるワルツの音色と恋人は瑞々しく、隊列を組み旅立つ鶴の群れ>>続きを読む

メトロポリス(1927年製作の映画)

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頭脳と手の媒介者は心でなくてはならない

1時間58分版。開始時に注意書きがあったとはいえ字幕での説明が多く、過去には3時間30分で公開されたという。作品自体が古いものだし分かりやすいだろうと思って見
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炎628(1985年製作の映画)

5.0

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反戦争なのか戦意高揚なのか判断しかねる悲劇と熱狂の両輪。爆撃や掃射のあの迫力はちょっと今まで見たことない。爆音と衝撃波で耳をやられ、言葉はくぐもり、音は潰れノイズと入り混じったサイケデリックな音。戦争>>続きを読む

ソドムの市(1975年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

何がとは言わないけど立派でした。

他作品を見たり事前にエグいという情報があったから普通に見られたけど、前知識なしで見たらやっぱり度肝を抜かれることでしょう。カルトにつられて初めにこの作品を見ると嫌悪
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伽揶子のために(1984年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

この作品に関しては小面倒くさいところは見なくていいと思った。日本や朝鮮に思いを巡らせていたらちっとも入り込めなかったけど、あー映画を見ているんだなぁと思ったら一転、それまでとは全く違う景色が広がってい>>続きを読む

鉄男 II BODY HAMMER(1992年製作の映画)

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色が様々な表情を見せるのが魅力的で温度や感情、機械と肉体のコントラストが生々しく人間味を感じた。ユーモアというか少林寺の門下生のような連中に一々入るバーニング演出がツボ。無機質で人との繋がりの希薄さを>>続きを読む

眠る男(1996年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

様々な視点から生と死を描いたような作品。死んだように眠る男拓次、彼の周りには蝶の剥製や明けぬ夜のように壁に描かれた月と洗面器の星といった死の影が現れる。劇中、星が月の側に寄ると人が死ぬと語られ、空飛ぶ>>続きを読む

吸血鬼ゴケミドロ(1968年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

信頼と不信のせめぎ合い。

墜落した飛行機の中には疑心が芽生え、己に火の粉が降りかかると敵意をむき出しにして攻撃する。暴力反対を訴える外国人女性の変わり身の速さと言ったら…そんな彼らは謎の男の恐怖から
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勲章(1954年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

今でもあの時の代案は出せない。

戦時中は勲章を身に纏った陸軍中将岡部とその子供たちは戦争が終わった今、親戚中から疎まれながら居候している。この岡部親子を軸に国と文化と市民の対比が描かれ、最後は娘ちか
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昆虫大戦争(1968年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

自然破壊系かと思いきや東西冷戦。無邪気に虫取りという侵略行為をする者達は当然のように罰せられる、この辺りは禁じられた遊びを思い出した。虫は人を狂わせる麻薬、傷つける破壊兵器のように制御できないものの象>>続きを読む

日本の夜と霧(1960年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

セリフの複雑さと膨大な言葉がワンカットの長さと相まって張り詰めた空気の中躓きや間違いを生む。その動揺がガラスにヒビが入るようにジワジワと拡がっていく。一つの集合体でありながら性別、身分、時代という分厚>>続きを読む

忠臣蔵外伝 四谷怪談(1994年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

狐の嫁入りのようなお梅一団の狐面と白塗り、最高じゃないですか。現実と非現実の狭間、鮮やかで艶っぽい色彩がとても綺麗。人か妖か…言葉を話さず踊り狂う荻野目慶子、笑ふ男のように不気味な石橋蓮司、渡辺えり子>>続きを読む

化石(1975年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

観光地PRとナレーションがうるさくなかなか入り込めなかったが、ジワジワと欧州の気品と緊張感のある画面に釘付けになっていった。冬のパリ、一鬼は体を壊しパリで心惹かれたマルセラン婦人と瓜二つの死神に魅入ら>>続きを読む

乾いた花(1964年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

60年代の粗く荒んだ町並みがモノクロの映像と相まってギラギラとクールに黒光りしている。映画のどこを切り取ってもハイライトのようで、繋ぎのカットさえも役者の色気が凄すぎて絵になってしまう。村木が暮らす生>>続きを読む

楢山節考(1958年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

リメイクと元になった作品、それぞれが個性的、尚且つ上質で面白いという稀有な作品。伝統的な日本芸能のような音楽と演出で、舞台の幕が下りるように場面の切り替わりがワンカットで展開する。家屋は勿論、山道や、>>続きを読む

死の棘(1990年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

「新しい過去をたくさんつくろう」

始まった瞬間から言い合う夫婦と襖にぶちまけられたインクのシミに不安がよぎり、小津安二郎を彷彿とさせる神経質なまでに拘った小道具と人の配置、無機質で感情を削ぎ落とした
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テオレマ 4Kスキャン版(1968年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

シュールな寓話。

聖書、歴史、政治、文学、絵画辺りの知識があればもっとよく分かるのかもしれないけど、この意味不明さも魅力の一つ、難解で底が見えないほど深くに沈められた何かに惹かれてしまう。平和に暮ら
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鉄男 TETSUO(1989年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

80sアンダーグラウンドの雰囲気が凄く良くて、OVA風のエロ・グロ・ナンセンス+シュヴァンクマイエル風のアニメーションと、機械的なポスト・パンク風のサウンドがピッタリ。地上の好景気への不満と不安からか>>続きを読む

ダゲール街の人々(1976年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

監督の住まいの近所ということで皆顔見知りなのか、自然な距離感で撮影していた。冒頭で語られる店員とお客の暇な時間をそのまま映すというのはアケルマンに受け継がれているんだなぁと思ったり。街の住人は個性的で>>続きを読む

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