Ryo

炎628のRyoのレビュー・感想・評価

炎628(1985年製作の映画)
4.3
今起きている事件、この映画でいうとユダヤ人迫害を引き起こした人間の根源は子供から始まる。それを根絶やしにするのがナチスの考え。
子供の未来はヒトラーであっても奪ってはいけないというのが主人公の考え。
ここにこの映画のテーマが見える

「子供から全てが始まる。生かしてはおけない。貴様らもみんな死ね。貴様らの民族に未来はない。共産主義は下等人種に宿る。絶滅させるべきだ。必ず遂行する必ず遂行する!」

クエンティン・タランティーノは『炎628』を映画史上最高の戦争映画にランクしています。それほど価値のある映画で死ぬまでに一度は見ておくべき映画です。


主人公を通じて我々も戦争の怖さ、戦時下の人間がいかに残酷になれるのかを目の当たりにする。それは主人公の初めと終わりで顔つきがかなり変わってるのがわかる。それほど素晴らしい演技だった。この映画にはカッコいいヒーローもリアルな戦闘シーンもありません。しかし、本当の戦争が描かれています。そして見た後なぜ同じ”人間”動物同士こんなことができるのか?と考えてしまいます。
商業的な意識をしてない。ストーリーを意識せずただリアルな映画を作り、ただ観客に戦争、ナチスの悲惨さを見せつけたかった。だからこそできた映画だと思っています。

ーメッセージー

ラストは生き残ってしまった少年は落ちていたヒトラーのポスターに向かってライフルを向けます。やり場のない自責の念をポスターに撃ちこみます。それと対応するようにヒトラーの様々な演説や、強制収容所、戦争で破壊される建物の記録映像が逆再生されます。どんどん戻っていく映像はヒトラーの赤ちゃんのころの写真で止まります。そこで少年は撃つことをためらうのです。ドイツ兵の言葉を思い出されます。

「すべては子供から始まる」

ヒトラーもかつては子供でした。この赤ちゃんを殺すことができれば虐殺は起こらないのかもしれません。しかし赤ん坊のヒトラーをフリョーラは撃たなかった。何が正しいのかはわからない。だが少なくともフリョーラは、感情やイデオロギーに惑わされて、無力な赤ん坊を殺したりはしなかった。ヒトラーを殺すのが正解なのか。ヒトラーに投票してナチスに政権を握らせてしまったドイツ国民に非はないのか。ドイツ軍のやってる事と同じように「根絶やし」にすることが正しいのか。色々と考えさせられるラストです。
Ryo

Ryo