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月はどっちに出ているのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

月はどっちに出ている(1993年製作の映画)
3.5
在日朝鮮人のタクシー運転手とフィリピーナの恋愛模様を軸に、在日外国人やヤクザなど東京に暮らす様々な人々の日常をエネルギッシュかつコミカルに描いたヒューマン・ドラマの力作。
原作は、梁石日の自伝的小説「タクシー狂操曲」(「血と骨」の後日談)で、在日朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)国籍の崔洋一監督が、それをもとにした自身のWOWOW版テレビドラマを劇場版に撮り直したもの。
主演は石橋凌に代わり劇団SETの岸谷五朗を起用(ルビー・モレノや絵沢萠子は引き続き)。(1993)

同級生の金/金田(小木茂光)が二代目社長をしているタクシー会社で働く主人公、在日朝鮮人の姜忠男/通名:神田忠男( 岸谷五朗)は、通常のサラリーマンからはみ出した同僚たちに囲まれながら暮らしている。
忠男の母(絵沢萠子)はフィリピンパブを経営していて、忠男はそこで関西弁を喋るフィリピン人ホステス、コニー (ルビー・モレノ)に惚れてしまい、半ば強引に彼女の部屋に引っ越し同棲生活を始める。
タクシー会社では様々なトラブルが続き、とうとうヤクザ絡みの事件が起こり、コニーも別の店に移ってしまう…。

~共演者~
・主人公に纏わりつくパンチ・ドランカーのホソ (有薗芳記)
・同級生( 遠藤憲一)
・タクシー会社の専務 (麿赤児)
・女房に逃げられ赤ん坊を背負っている運転手 (國村隼)、
・ヤンキーあがりの運転手(芹沢正和)
・元自衛隊員の新人運転手(金田明夫)
・出稼ぎイラン人の運転手
・無賃乗車をするサラリーマン(萩原聖人)
・明らかにヤクザと分かる金融業者(古尾谷雅人)

「俺は朝鮮人が嫌いだけどよぉ、忠さんは好きだ。だから、ちょっと金貸してくれよぉ」
「儲かりまっか。ボチボチでんな。」

日本人が正面から描きにくい"在日"というテーマを崔洋一監督が、見事に描いた力作。
結婚式で北朝鮮籍の人たちが韓国籍の人たちと同席した時に歌のバランスを取るのに司会者が苦労するシーンや、タクシー料金を踏み倒そうとする日本人サラリーマンの情けない言動と主人公の対応など、印象的な場面がたくさんある。
役者では、パンチ・ドランカーの影響などから精神を蝕まれていく有薗芳記やサラリーマン役の萩原聖人が印象に残る。
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