アメリカの良心を描かせたら、キャプラの右に出る者はほとんどいないのではないだろうか。
バーバラ・スタンウィック演じるアンという記者が、やけっぱちで書き上げた架空の人物によるという投書。
その架空の人物はジョン・ドウという人物で、民衆の本音を代弁する。
メディアによってつくられた人物が社会を席巻していく。
マスコミによる群衆扇動が、いかに影響力が強いことか思わされる。
それは2020年の現代でもさほど変わらないだろう。
人々の熱意、純粋な思いにほだされ、どんどんと表情が変わるジョン。
人々が直接事の流れの詳細を、言葉を丁寧に選びながら誠意を込めて伝える様子は、至ってシンプルにカメラはきっちりととらえる。
そういった純粋な思いの持つ真の強さがわかりやすく伝わってきて、それだけで涙が出そうだった。
それと同時にジョンの純真さに心を打たれる。
やはりゲイリー・クーパーは、母性をくすぐるような青年役がはまる。
元野球選手の彼が、友人の大佐らと部屋で呑気に野球しているところが無邪気でかわいい。
たとえそれが虚像であっても、世の中を本当に良い方向へと変えられるのなら、それはそれでいいのかもしれないと思わされる。
とりあえず権利者がやりたい放題するために、民衆が扇動されるのだけはよろしくない。