菅藤浩三

失はれた地平線の菅藤浩三のネタバレレビュー・内容・結末

失はれた地平線(1937年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

シャングリラ(桃源郷)という言葉を世界中に広めた作品。小説とは映画の登場人物の名前はなぜか変えられてます。映画では、突如シャングリラにつれていかれるのは、文明社会から外交官コンウェイ・弟ジョージ・実は詐欺師のバーナード・病気の女性グロリア・古生物学者のラビの5名。人里離れて隔絶したシャングリラに案内されると、そこは緑豊かで美しく、気候温暖で、住民はみな中庸を重んじ、犯罪もなく恋人の取り合いもなく、老化も極端に遅く外界から隔絶された極楽だった。豊富にとれる金をつかい文化財宝をあつめ、そこにいるだけで心穏やかな毎日を送れる。シャングリラの案内人チャン(アカデミー助演男優賞にもノミネートされました)の話を聞くにつけ、信じられないながらもその魅力にあがないきれない心情に陥る。
 ところが、弟ジョージだけはどうしても文明社会イギリスにもどりたいと、中で恋仲になった女性マリアをつれて、嫌がるコンウェイを説得しシャングリラから脱出する。脱出の途中でマリアは本来の老婆の姿になり息絶え、ショックで弟ジョージは身投げ、奇跡的にコンウェイだけが文明社会に戻ることができた。がしかしコンウェイの心はもはや文明社会になく、何度も脱出し行方知れずシャングリラに向かい続ける。。。誠に心に迫るユートピア作品だったし、ヒット古典の原作も読みたくなった。平和共産社会を礼賛する作品にも受け止められるので、何度も検閲され、現在も完全な形のフィルムは残っていない。ただ、平和共産社会は働かずとも潤沢な富が得られ続けることを前提としているため、現実社会では無理ということも何となく感じられた作品だった。ロバートキャプラは大好きな監督だが、この作品は異色でもある。
菅藤浩三

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