鉄塔が引き倒されるシーンに絶句。やや傾いている鉄塔がロングショットで提示され不審に思っていると不意のズームアップで画面中央を水平に横切る2本のワイヤーが見え始め、それまで背景的にしか認識してなかったクレーン車が動いていることを遅まきながら理解する。鉄塔を引っ張るワイヤーの存在は『三里塚 岩山に鉄塔が出来た』においては、鉄塔の傾きを修正するものとして撮られていただけにワイヤーが可視化される瞬間は二重の意味でショック(それまでの抑圧的な測量という行為が『三里塚 岩山に鉄塔が出来た』ではポジティブな行為に反転していたこともこの場面のショックを大きくしていた)。
滑走路の進入路直下にある農家の岩沢さんが、工事によって土砂が流入するようになったため休耕し結果植物が繁茂した田圃を眺めていると不意に飛行音が高まり、機体は見えないもののその機影が田圃を一瞬覆い尽くし過ぎ去る。映像的にも比喩的にも「頭に来る」ショット。飛行機の機影が通過する直前には、政府の行き当たりばったりな休耕政策を批判する岩沢さんとその最たるものは空港建設だと応えるレポーターのやり取りがあっただけに飛行音の増大と機影の通過はほとんど挑発的にすら思えてくる。