一人旅

ゾンビーノの一人旅のレビュー・感想・評価

ゾンビーノ(2006年製作の映画)
4.0
アンドリュー・カリー監督作。

ゾンビがペット化された世界を舞台に、いじめられっ子の少年と一匹のゾンビの交流を描いたコメディ。

現在までに世界各国で量産され尽くしたゾンビ映画のカナダ版ニュー・バリエーション。まさに“設定勝負”の快作で、「人間VS人を喰らうゾンビ」のスタンダードなゾンビ映画とは一線を画する。

放射能の雲が原因で死体がゾンビとして蘇る中、ゾムコン社が開発したゾンビ専用首輪によりゾンビのペット化が実現した世界を舞台に、新しくロビンソン家に飼われることになったファイドと名付けられた一匹のゾンビと一家の一人息子ティムの種族の違いを超えた交流と友情を描く。

“ペット化されたゾンビ”ということで、今までのゾンビ映画には見られなかった描写が新鮮。芝刈りするゾンビ、新聞配達するゾンビ、洗車を手伝うゾンビ、子どもの遊び相手になるゾンビ、人間の恋人の代わりを務めるゾンビ…。ペットというより使い勝手のよい家政婦みたいな扱いだが、人間の指示に従順で文句ひとつ言わないゾンビの姿は滑稽ながらもちょっぴり哀愁が漂う。ゾンビ本来の性質(=凶暴で人を喰らう)が首輪により完全に抑えられた状態だが、首輪の赤いランプが消灯するとそれまでの従順な態度が一変、凶暴化して人に襲いかかるというゾンビ映画のスタンダードな光景が表出する。それもなかなかのエグさで、口の悪い老婦人の腕を嚙みちぎったり、いじめっ子の幼い子どもまで容赦なく喰い殺すというブラックさ。

ゾンビと少年一家の交流・友情・愛情、さらには疎遠だった父と息子の絆の再生ストーリー、おまけにゾンビの人権と幸福に関するちょっとした考察まで盛り込まれた、ゾンビ映画のカナダ版バリエーション。50年代ハリウッド映画を意識したクラシカルな映像・演出(セット風の運転シーン、手書き風のエンドクレジットetc...)も印象的。
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