きゅうげん

エンゼル・ハートのきゅうげんのレビュー・感想・評価

エンゼル・ハート(1987年製作の映画)
4.4
監督アラン・パーカー
主演ミッキー・ローク
助演リサ・ボネット
  シャーロット・ランプリング
  ロバート・デ・ニーロ
……いや豪華すぎる布陣!

私立探偵ハロルド・エンゼルのもとに依頼が舞いこむ。人気歌手でありながら戦争を経て精神病を患い行方不明となった男を探してほしいのだという。
エンゼルは持ち前の皮肉と愛嬌と腕力で、主治医やバンドメンバーなどへの調査を進めるのだが、周囲では殺人事件が起こりつづけ……。


「かっこいい探偵映画かと思いきや……?」という“脱・ハードボイルド”モノの隠れた逸品。
たとえばトマス・ピンチョン作品ならエンタメ性、ポール・オースター作品なら思弁性が、ジャンルの脱構築的なフックとなりますが、本作は衝撃のオカルト展開がそのパラノイアックな魅力となっています。
「ルイス・サイファー、略してルシファー」とか悪魔表象・ブードゥー表象の前時代感とか、微笑ましいところも散見されますし、入水や鶏などのモチーフから「エヴァンジェリン」とか「エピファニー」とか登場人物の名前まで、様々なキリスト教要素はどれもかなり露骨。
けれども、その狂信的・妄執的なストーリーラインが“信頼できない語り手”っぽく探偵モノとしてのジャンル的枠組みと融合しています。

なにより、くたびれた若きミッキー・ロークがキュートでセクシー!
それにブルックリンがブルックリンすぎるし、ルイジアナがルイジアナすぎる。印象的な撮影の数々も素晴らしいですねぇ〜〜〜。