都部

ドラえもん のび太の海底鬼岩城の都部のレビュー・感想・評価

2.9
海底での冒険劇という明朗な筋書きに反して、硬質なSFを食むような所感を抱かせる物語である。海底都市と海洋探検に伴う閉塞感と暗澹たる空気が漂うためにその実 開放的とは遠くて、それこそテキトー灯を通した──明るく見えているだけで実態は真っ暗──語り部達の境遇と、どこか重なる味わいを覚える一作だ。

同様の海を舞台とした『南海大冒険』と比較すると、物語の皮切りとなる浪漫としての金塊を積んだ沈没船もフレーバー程度に流され、海底火山による連鎖的な地球の滅亡と重々しい。

旅のガイド役を務める色ボケのバギーの声質も、機械的なそれから離れない為にどこか不気味さを感じる。印象的なのはスネ夫とジャイアンが水圧で絶命を迫られた時の、人間への根源的な見下しを感じさせる冷たい反応で、それからの最後の結末などを踏まえると感情の高低差が極めて激しいキャラクターである。しかしかといって人間的ではなく、自我を持った機械の感情の独特の機微を感じさせるそれなのが絶妙。

海底王国ののび太たちの対処と対応も他の作品の同じ位置付けのものと比べると冷淡で、関係性の掘り下げも最低限のままに物語は進行していくたて、最終決戦も損得勘定による依頼の範疇を出ることなく人情的な盛り上がりに欠ける部分はある。なので毎度のドラえもん的な『また来るよ』オチも義務的なものとして処理されている部分は否めないし、あくまでも海底を舞台とした未知とのSF的接近に比重が置かれているように感じられた。
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