Eyesworth

シザーハンズのEyesworthのレビュー・感想・評価

シザーハンズ(1990年製作の映画)
4.8
お馴染み監督ティム・バートン×主演ジョニー・デップのコンビが織り成す悲しきハサミ男のラブファンタジー。ティム・バートンの映像マジックと謳われているが、確かにカラフルな舞台設計やハサミのデザイン、植木の造形もおとぎ話のようで美しい作品だった。

朝、色とりどりの家から色とりどりの車で続々と出社していく旦那方とそれを見計らって噂話に花を咲かせる奥様方の対比がなんだかシュールで笑ってしまった。田舎あるあるなのかもしれないが、こんな横の繋がりが強い地域でペグは化粧品のセールスをしたり、見知らぬ男を連れてきたり、明らかに過剰な行動をしているのでこの狭い監視社会では白い目で見られるのもわかる。

エドワード生みの親の老人はなぜこのシザーハンズの男を生み出したのか?古城で一人きりの寂しさから身近な道具・工具にハートを持たせてみたかったのだろうか。ではハサミでならなければならなかった理由は?その辺の事情が深堀りされていないので真意はわからないが、やはり一生両手がハサミでは便利な反面、それを上回る不便が付き纏うことは想像に難くない。それに同情して彼は死の間際に人工の腕をプレゼントしたのだろう。
言葉やエチケットを教えて、できるだけ人間社会で生きていけるようにとそんな願いがあったはずだ。けれども、結果的にはペグに連れられるまでずっと城に篭もりっぱなしで身近な冷たい物に囲まれて暮らしていた彼がいきなり感情豊かな人々と共存することはあまりにもハードな試練であり、得意分野の剪定やヘアカットにより人気者になっていくが、当然ながら度々事件を起こしてしまう。彼は優しい心を持ち、好かれたかっただけなのに身体は繊細な薔薇の棘ように触れた他者を構わず傷つけてしまう。愛は痛みを伴うことを彼は身をもって知ったはずだ。
最後の事件からエドワードとキムは距離を置いたが、キムとの間に芽生えた愛情という新たな感情に温められながら、一人だけど本当の意味で孤独ではない人生を送ったのではないか。
おばあちゃんになったキムがエドワードの作り上げた雪を眺めているラスト。冒頭の伏線回収が素晴らしい。
Eyesworth

Eyesworth