Kumonohate

人妻椿 前篇のKumonohateのレビュー・感想・評価

人妻椿 前篇(1936年製作の映画)
3.7
昭和11年作。5度にわたって映画化&TVドラマ化された名作メロドラマの初映像化作品。恩人の罪をかぶって国外逃亡した夫の帰りを待つ美人妻に、これでもかこれでもかと降りかかる苦難や過酷な運命、そして、彼女を我が物にしようという男の魔の手。あり得ないくらい頻発する凄い偶然といい、ヒロインを襲うピンチの連続といい、絶体絶命の彼女を救う都合主義といい、危機を乗りきったと思いきや間髪入れずに発生する次の危機といい、まさにメロドラマの王道中の王道。フィルムの欠落なのか、一部、肝心なシーンが描かれていなかったりするが、そうした瑕などモノともしない面白さである。また、無実の罪を着た夫の逃亡先がチベットというのが心に残る。河口慧海・能海寛・多田等観・寺本婉雅・矢島保治郎・青木文教と、今から100年前、日本人は続々とチベットに赴いていた。また、本作公開時のチベットは、51年の中華人民共和国による侵攻以前のダライ・ラマ政権下である。今よりも心理的な距離は近かったのかもしれない。
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