三隅炎雄

関東やくざ者の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

関東やくざ者(1965年製作の映画)
4.4
関東シリーズ2作目。これまでの小沢作品にあったギャング映画風味が消え、一般的な着流し任侠映画のイメージにかなり近くなった。鶴田浩二は荒くれではなく最初から立派な侠客だし、ガマン劇としての全体の体裁も整い、忠臣蔵からの影響もわりとはっきり見える。が同時に政治性社会性が前に出た。

時代は大正。シベリア出兵の言葉が出てくる。米騒動を利用した院外団ボスの倒閣策謀に協力する近代やくざが丹波哲郎。その丹波一派とやくざはやくざらしくの旧来型鶴田浩二一派、この両派が、政治屋の海運会社乗っ取り計画を契機に対峙する。株主総会会場の内と外でどう相手を暴力で抑え込むか、それが一番大きな問題で、どんなに対立していてもやくざたちは否応なく同じ経済システムの中で生きていくしかない。

最後の殴り込みは小沢作品ならではのド派手なアクション。死屍累々、いいのも悪いのも古いのも新しいのも、結局みんな巨大な歴史の中に飲み込まれていく。原泉の母を横においた丹波哲郎の悪役が鮮烈な印象を残す。小沢任侠、これも傑作の一つ。
三隅炎雄

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