パンケーキレンズ

フルメタル・ジャケットのパンケーキレンズのレビュー・感想・評価

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)
5.0
キューブリックの冷め切った目線が、ベトナム戦争を理性的に描写するからこそ、反戦というよりも厭戦に近い、最後に残る虚しさが強烈!

☆第1のクソ地獄・海兵隊訓練所

撃たれる前に撃ち殺す、何の躊躇もなく皆殺しを遂行させる為、本物の元海兵隊軍人が、鬼軍曹を演じゲキを飛ばすんですね

汚い怒声・罵声の散弾銃をまき散らす鬼軍曹は、人材教育のプロフェッショナル!

後になってみれば、鬼軍曹の汚い言葉に愛情さえ感じるのは私だけだろうか♩

全ては生き残るため…

何の見境もなく、誰でもあっさりあの世へ連れていかれる戦場で死なないため、そのための訓練と体罰の厳しさが、戦場の過酷さをそのまま物語っている

肉体とライフルと殺戮本能

これだけあれば戦場で戦えると言わんばかりの姿勢、ただ、制御不能な本能(狂気)が目覚めてしまったら、肉体を破壊し、海兵隊という組織事態を崩壊しかねない、「デブ野郎」を襲った悪夢があまりに鮮烈

それを演じた若きヴィンセント・ドノフリオがまた激ウマなのだこれが!


☆第2のクソ地獄・ベトナムの戦場

ベトコンを大量に撃ち殺す為に訓練された兵士たちが、いざ戦場に降り立つ、けれど一体何人のベトコンが、この映画で姿を現しただろうか

厳しい訓練と仲間の死亡

それだけの犠牲を払って、やっと射止めた敵の姿は、あまりに小さかった

彼らは誰もいない廃墟に、ライフルを撃ちまくってただけなんだと…

死ぬほど味わった恐怖が何も報われないまま、ミッキー・マウスマーチが高らかに鳴り響くなど、この映画は、要所要所の端的な演出が、全編通してとにかく効いていて、そこに引き込まれる!

戦争の内側の熱い部分ではなく、冷たい部分を切り取った映画

彼らが見た戦場は

死体のように冷たかったのだ