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フルメタル・ジャケットのYのレビュー・感想・評価

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)
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【伝説の罵倒】

名作を2本見たのかと思った。
前半後半でテンポも雰囲気もガラッと変わるので2本分の満足感があった。

この世に存在する限りの汚い言葉が、この映画の前半数十分にギュッと凝縮してある。

「差別はしない。平等に価値がないから。」
人格否定と罵詈雑言によって、「歪んでいく」というよりも全く別の物に「組み直される」。銃を組み立てるように、人間を兵器へと再構築していく。
観てる側はそのシーンに不快感を抱くどころか圧倒されるばかりで、訓練というよりもある種のショーを見ているような感覚になる。

ここで「組み直され」きれず、「歪んで」しまったのがレナードなのかも。
序盤のたるんだ微笑みから、中盤の気味の悪い三白眼までの不気味な表情の変化の演技が素晴らしい。いつまでも脳裏にこびりついています。


後半はそんな異常な訓練の後、組み直された兵士達がどういうものの考え方・基準で判断し、行動していくかが見どころ。

ミッキーマウスマーチしかり、音楽と映像のギャップがまたすごい。
その場面にあるはずのないもの、聞こえるはずのないものがある、という違和感は本当に気持ち悪くてインパクトがありました。

どこの場面で切り取っても気持ち悪いほど整ってる。これもまたキューブリック監督の『シャイニング』や『時計じかけのオレンジ』でも感じたことですが、重暗いテーマに対しての映像と音楽の美しさのミスマッチがとても粋です。
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