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フツーの仕事がしたいのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

フツーの仕事がしたい(2008年製作の映画)
3.5
【壊れた男は壊れたことを知らない】
『アリ地獄天国』の土屋トカチ監督作品セメント運送業で壊れてしまった者の闘いが描かれる。

冒頭、本作の主人公であるセメント運送業の男が車を運転しているところから禍々しいものを感じる。明らかに《フツー》ではないのだ、投げやりで会話もあまり成立していないように見える。そして、ラジオからは上司に文句が言えない同僚からの罵声が浴びせられる。

セメント運送業は、合理化の流れで下請け化が進み、歩合制となった。しかし、歩合の割合は日に日に減らされ、1ヶ月働きっぱなしでも手取り僅か30万円程。社会保障などはないし、トラクターのメンテナンス費用も受け持つ羽目になる。

彼はようやく組合に入り、フツーだと思っていたことがイジョーだと気づくが、会社から圧をかけられ、組合脱退&退社を迫られる。

弱者が弱者を搾取する世界は常識外れ過ぎて嘘っぽく見えてしまうが、これが真実だ。壊れたことをを知らずにさらに壊され、壊していく様を描いた大人の社会科見学と言えよう。
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