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ローリング・ストーンズ・イン・ギミー・シェルターのarchのレビュー・感想・評価

4.4
普通のライブドキュメンタリー。あの時、あの空間に満ちていた異様なエネルギーに突き動かされ、30万人近く観客とザローリングストーンズは「オルタモントの悲劇」に至ったのだという記録。
ツアー最後の無料コンサートがサンフランシスコで企画される。
突然の会場側のNGにより、前日に会場がオルタモント・スピードウェイに変更。それにより機材も急遽移動、セキュリティもガバガバ。スタッフの組織化もままならず、4人の死者を出すことになるロックンロール最悪の1日である。(会場では同時に出産が4件あったそうだ)

その事件が起こらない方が不自然な状況を当時の映像を通して振り返るという作品なのだが、面白いのは編集室にいるローリングストーンズのメンバーがその映像を虚ろな目で観るというのが軸にあることだろう。「オルタモントの悲劇」の最大の関心事だったセキュリティを担当していたヘル・エンジェルズという暴力団によって青年が刺殺された事件をステージ上の彼らは、実際には見ることはなかった。だから彼らはその映画用に撮影されていた映像を振り返ることで、何が起こったのかを理解しようとするのだ。

前半は単純にパーフォーマンスとして最高。ミック・ジャガーの色気を再確認する作りになっている。しかし後半に行くにつれて、ステージに上がる一般客な様子が、映り出す。このイベントに参加した他のアーティストの場合ではもっと酷かったり、なんなら会場入りの時点てミック本人が殴られていたりと、モンタージュのレベルでその状況の悪化の一途を辿っていくように作られていく。
セトリ的には前半(本作の序盤の曲は比較的後半の曲ばかり)の曲の時点で、コントロール不可な状態に陥っており、ミック・ジャガーの声が全く届かない、その無力さを痛感させられるのだ。

凄まじい記録だった。
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