三隅炎雄

盲目ガンマンの三隅炎雄のレビュー・感想・評価

盲目ガンマン(1971年製作の映画)
4.0
思っていたような単純な座頭市イタダキ西部劇ではなく、そうとうビザールな映画であった。盲目の主人公をトニー・アンソニーが勝新を大いに手本にしてユーモラスに演じていているが、炭鉱夫の花嫁50人をヨーロッパから連れて来て一儲けしようとしているわけだからズバリ悪党である。商品の花嫁50人を巡って、メキシコの政府軍と野盗との間で争奪戦を荒野で繰り広げても、主人公が最終的に対女性でヒューマニズムに目覚めるわけでもない。座頭市と言うより陽気な不知火検校というか、笑いと共に世の中の綺麗事を引っ剥がす反道徳的な思想、社会についての露悪趣味的な思想の映画である。私は同時代の東映のポルノ系映画に通じるものを感じた。大声で面白いと言うには少々躊躇うが、全篇マカロニ西部劇らしい猥雑で奇っ怪な細部に満ち、怪作として見る値打ちはじゅうぶんにある。リンゴ・スターの悪役もサマになっている。
三隅炎雄

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