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仁義なき戦い 広島死闘篇のSのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 広島死闘篇(1973年製作の映画)
4.1
広島死闘篇は、割と仁義ある戦いのような。

純粋で直情的な性格ゆえ、
それが狂気になっていく山中(北大路欣也)と

生まれながらの狂犬で
暴力を愛する破壊的な大友勝利(千葉真一)の対比がよかった。
妙に声が甲高いのもなんかすごい異質。

山中の、義理は大事にするけど短絡的で、だけど、殺人の時は相手の息の根が止まるまでしっかり確認する所とか(そしてその後必ず口笛を吹く)狂気だった。暗闇でギラつく瞳が、彼の出自とか生き様とか、彼の本質を表現してるなと思った。

大友の狂いっぷりもすごかった。人を海に沈めた後に浜辺に吊し上げて拳銃の練習の的にするとかヤバすぎ。でも、仁義とか言わずストレートに、案外正しいこと説くのが面白い。
「神農じゃろうと博打打ちじゃろうと、ワシら美味いモン喰うて、マブいスケ抱く為に生まれてきとるんじゃないの。銭に身体はるいうどこが悪いの」
でも一番最初のケンカでは、包丁もってるのになぜかそれで竹を鋭利に切って、竹で山中を刺すっていう謎のひと手間に笑った。

広島を牛耳る村岡も親分らしく懐広くて、冷静で、策士で、なんか安心した。成田三樹夫演じる若頭の松永も、情はあるけど冷静で、やるべき時にやって、しっかりしめてる感じも良かった。成田三樹夫は髪型以外は、本当にかっこいいんじゃ。

梶芽衣子演じる靖子の凛とした美しさもよかった。
山中と靖子の恋や、大友勝利との対立とか、フォーカスがしっかりあたってる分、すっきりまとまって分かりやすかった。

んでまたラストに葬式。しかも山守(金子信雄)が、広能(菅原文太)にこれみよがしの嫌味で「山中いうんのは、シャンとしとったのう、親にも一家にも迷惑かけず、村岡はいい若い衆持ったのう」っていうのがムカムカして最高だった。

にしてもいつでも年老いた策士たちによって、若い命が散っていくなー。
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