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顔たち、ところどころのSのレビュー・感想・評価

顔たち、ところどころ(2017年製作の映画)
3.8
映画監督のアニエス・ヴァルダとアーティストのJRがフランスの村々をめぐり、そこで暮らす人々の顔を写真に収めては、ポートレートを大きく引き伸ばし街中に貼っていく。

ヌーヴェルヴァーグとか現代アートとかよく知らないのですが…?
どこまでドキュメンタリーでどこまで作りこんでいるの…?
みたいな気持ちを
「そんなことは重要じゃないでしょ」と一蹴して
ざっくばらんに迎え入れてくれるような作品。

「自由な発想から物事を想像し、問いかける。“想像力を働かせてる?”って」という言葉どおり、ふたりは温かな眼差しで想像し、人と向き合っていく。
坑夫住宅に住む夫人、鐘つき男、港湾労働者の妻…彼らの記憶や生き様に息づく愛を見逃さない。
ふたりがそれを自然に出来るのって、自分の人生や経験をちゃんと大切に抱きしめてきたからなんだろうなーと、一晩で海に消えた思い出の写真から、ルーヴル美術館から、ゴダールから思ったり。

とはいえふたりの考えや行動は、大胆で奇抜。時にしなやかに強情。
なによりそれを楽しむ田舎の人々にも、アートを受け入れる心の土壌が育ってるんだなーという所が素敵。
人と関わることで何かが生まれる楽しさを、思ってもみないことが実現する奇跡を、みんなが分かっているというか。

JRが時々ぞんざいにアニエス・ヴァルダを扱うところもなんかよかった。
「偶然こそが常に最良の助監督」
監督ではないところがみそなのね、という作品でした。
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