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エロス+虐殺のeiganoTOKOのネタバレレビュー・内容・結末

エロス+虐殺(1970年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

吉田喜重の問題点は、決定打となる政治的な言説を抜き去り、エロスやロマンティシズムにまとめてしまい、肝心なアナーキズムがあまりに陳腐になってしまう点にあると思う。
他の作品も然り。
とくに現代パートが酷い。アナーキズムはあくまでも無政府主義であって、単なるアナーキーな生き様や奔放なフリーセックスではないのに、現代パートはくそださ描写の売春やファティッシュやフリーセックスに留まる。しかも思想がないからヒッピー以下。
伊藤野枝は書き手だけではなく、婦人解放運動家でもあったのに、なんで男女のもつれ、すったもんだにここまで時間割くんだ、ふざけんな?
伊藤野枝は堕胎の権利や、売春する女の権利(労働者として)、結婚制度の否定と、現代にも続く鋭い問題提起とエンパワメントの先駆者だったにもかかわらず、大杉栄の取り合いみたいなの、ふざけんな?

唯一良かった描写は、大杉栄と同志のやりとり。私有財産制と夫婦や家族が一蓮托生であり、結婚制度を壊すために堂々と複数人と関係を結ぶという主張。それに対して、一夫多妻制はむしろ女性解放の真逆だろうという同志の指摘。
これは最近ポリアモリーの関係をむすぶ人たちの中でも、ただ都合良いだけでは?と批判される関係性もある問題。
本作品でも、単純に議論は男、女は言うこと聞いてれば良い、みたいな内容が多くて、それはとても対等なポリアモリーとは言えない。しかも大杉栄は結婚してるし、主張ガタガタだからこそ、野枝のほうをもっと奔放に描けていたら良かったのにね。
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