かじドゥンドゥン

モンスターのかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

モンスター(2003年製作の映画)
3.8
幼い頃に身内から性的虐待を受け、自分の存在意義を確かめるかのように体で周囲の男の気を引くようになり、13歳で体を売り始めた娼婦アイリーン。自分がこれまで〈愛〉だと思いたがっていたものが、所詮は体と金の交換に過ぎなかったと悟った彼女は、ついに生きることに嫌気が差し、なけなしの金で最後の酒を飲んだら死のうと決意する。

雨に打たれびしょ濡れのアイリーンが入ったバーのカウンターで、彼女に声を掛けてきたのは、童顔のレズビアン、セルビー。アイリーンは彼女の下心に警戒するも、やがて意気投合して泥酔。両親の友人宅に寄宿するセルビーの部屋に、アイリーンはこっそり泊まる。

愛に飢え切ったアイリーンの心に、セルビーの存在が瞬く間に浸み入り、二人は駈落ちを約束。そのための資金を調達しようと、客を取りに出たアイリーンは、猟奇的サディストにつかまり、レイプされる。セルビーとの待ち合わせの時間に遅れまいと必死のアイリーンは、客の車にあった拳銃で彼を殺害、遺体を隠し、車を奪って、セルビーを迎えに行く。

セルビーとの逃避行を続けるために、アイリーンはまともな職に就こうとするが、教養のない世間知らずの元娼婦は相手にされるはずもなく、セルビーから金が無いとせっつかれて、再び客を取るアイリーン。ところが、強姦されたことへの恐怖と憎しみが発作的に彼女を捉え、次々と客を殺害、金と車を奪ってしまう。こうしてアイリーンは、生きて行くための唯一の手段を売春から強盗殺人に変え、続くはずのないセルビーとの蜜月にしがみつく、惨めな「モンスター」と化した。

やがて、アイリーンの殺人が露顕し、二人の似顔絵がメディアに出回ると、アイリーンはセルビーにバスのチケットを買い与えて帰宅させ、自分は行きつけのバーで飲んだくれているところをあえなく逮捕される。その後の裁判で、セルビーはひたすら保身に走り、アイリーンひとりの罪を主張。目さえ合わせない恋人のつれない態度を、それで良いと肯定しながら、アイリーンは死刑判決を受け、12年の服役後に処刑された。実話に基づく。なんともやるせない映画。