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(500)日のサマーのsukizukiのネタバレレビュー・内容・結末

(500)日のサマー(2009年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

サマーという1人の女に恋をした恋愛下手な男(トム)の500日間が終始トムの一人称で綴られる。

一見、時系列がぐちゃぐちゃに見えるが、よく見ると過去から現在へ一本道で描かれている。時折飛ぶ時系列はサマーとの関係が冷めたものばかり。良好な関係との対比がなんともツライ。サマーと一夜を共にした朝は道行く人も笑い、自らも心踊り、本当に踊りだしてしまう。このあたりのくだりは「モテキ」が模倣している場面だ。サマーが離れた後のトムは仕事にも身が入らず、生活もすさんでいく。冷めてしまうと、サマーの表情から何まで全てが嫌いに見える。昔はその表情、振舞いすべてを好きだったのに。

トムはなぜサマーが離れていったのかわからないまま時が過ぎ、ついにはサマーは他の男と結婚してしまう。サマーはトムとの関係を友達から超えることはなかったがトムはサマーのことをかけがえのない存在と思っていた。トムはサマーに自分は特別な存在だと思われていると思い込んでいた。

思うにトムはサマーに関心を寄せているようで実はトム自身のことしか考えていなかった。サマーが自分だけに語ってくれたこと、サマーは自分しか守れない、だから酒場で絡まれた男に殴りかかる。サマーがトムの建築に興味を示す一方で、トムはサマーの音楽を否定する。トムはサマーのことを所有物としか思えていなかった。サマーはそれに気づいていた。「誰かの所有物になるのは最悪」と語っているのにサマーを所有物とするトムだが、トムはそれに気づかない。トムは愛は面倒で長続きしないと考えるサマーを変えることができなかった。トムはサマーに愛してる(Ilove you)と一度も言わなかった。彼らには会話が足りなかった。

そしてトムは失恋し、愛など幻想でありくだらないと吐き散らし会社を辞める。ラストは少し救われるオチだが、失恋した男ならとても共感できる映画である。失恋すると走馬灯のように過去の良き思い出、嫌な思い出が順不同で思い起こされる。そしてなぜ失恋したのかしばらくわからず途方に暮れる。
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