イルーナ

劇場版ポケットモンスター アドバンスジェネレーション 裂空の訪問者デオキシスのイルーナのレビュー・感想・評価

1.1
私にとっては、この作品が劇場版ポケモンの中でぶっちぎりのワーストでした。
ある場面で、不快な思いを通り越して怒りすら覚えたので……
で、今回改めて観直してみると……

本作がよく批判される点は主に「レックウザがひたすら執念深いだけで、伝説ポケモンならではの神秘性がまるでない」というもので、私もそこは完全に同意です。
しかし私が一番耐え難かったのは、過去のトラウマでポケモンが苦手になってしまったトオイが、様々な誤解や無理解、認証のガバガバさが重なり、強引にバトル大会に参加させられるエピソード。
当然バトル経験もなければポケモンすら持ってないから、どうすることもできない。
はっきり言っていきなり公開処刑同然の状況に追い込まれるトオイがあまりにも不憫すぎて、正視すらできない。共感性羞恥の気がある人にとってはトラウマものの展開です。
サトシの対応もまた酷くて、トオイの事情を聞かされたのにも関わらず強引に迫るわ、テンパりだすと掴みかかるという始末。
しかもサトシは謝罪すらなし。トオイはちゃんと謝っていたのに……
この下りは今回の再鑑賞でも正直言って観ていて辛かった。
その後のサトシの言動はいたって普通なのですが、それだけに、このエピソードが悪い意味で強烈。

また、本作が売りにしていたデオキシス対レックウザは、はっきり言って単調。ぶっちゃけレックウザは破壊光線を乱射することしかしていない。
その結果街のガードシステムの暴走を招くわで、いい所がまるでない。しかもデオキシス2体共々、あっさり飲み込まれる。
(にしてももはや洪水レベルでガードロボが溢れかえっていましたが、それだけの数を一体どこに収めていたのか?)
もう一つの主軸であるトオイのトラウマ克服も、散々引っぱった割にあっさり解決しちゃうのがなぁ……
しかもその直前に、デオキシスに抱きかかえられたまま空を飛ぶシーンがあるので、トラウマ克服の印象も薄くなってしまっている。

むしろ、ハイテク依存の弊害、電力が途絶えた中でのサバイバル展開のが印象に残っています。いがみ合っていた相手とも協力して事件解決に尽力する姿はやはりいいものです。
ですが、その場面すら短編が廃止された影響をモロに食らっていて、短編のコメディ要素をシリアス展開の最中にもねじ込むから、どうしても間延びした感じになる。
街そのものがギミックになっているという点は『水の都の護神』を彷彿とさせるけど、本作ではプラス面があまり描かれてないばかりか、むしろ序盤からガッツリマイナス面が描かれているので、どうしてもラルースシティに愛着がわきにくい(あちらの前半部分は、アルトマーレを理想郷として描くことに徹底していた)。

こうして観直してみると、物語の焦点を絞れてないのが目につきました。
最初観た時はバトル大会の愚行ばかり印象に残っていたのですが、問題点とはいえ新たな発見ができたという意味では、観直してよかったのかもしれません。
しかし次回作のOPで、レックウザが悪の組織に捕まっていたあたり、スタッフも相当思う所があったのでしょうか……?
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