クラシック好きの家族から教えて貰った作品。ロシア皇帝パーヴェル１世時代の宮廷で、存在しないキージェ中尉を巡り起こる騒ぎを描いた喜劇。
ロシアの大作曲家、セルゲイ・プロコフィエフが映画音楽を担当しており、その一点のみで今日名が残っているであろう作品。映画公開後の同年に、プロコフィエフは本作で使用されたスコアを改編して管弦楽組曲「キージェ中尉」を発表、彼の代表作になっているらしい。

1800年サンクトペテルブルクの宮殿、皇帝の昼寝中、皇帝側近の副官と女官がイチャイチャしていた際に、女官がコッソリ副官の尻をつねってしまう。思わずあげた叫び声で目が覚めてしまった皇帝は怒り心頭、犯人捜しが始まり、皇帝は警備責任者が誰なのか問い質す。当日の警備書類には書記官の書き間違いの結果、実在しない「キージェ」中尉が書かれていた。聡明なパーレン伯爵はすかさずこの誤記を利用して、架空の人物キージェ中尉を犯人に仕立てあげる。皇帝の安眠を妨げた罪でキージェ中尉は公開鞭打ちの上、シベリア送りとなった。誰も傷つけられる事もなく無事解決したかと思いきや、気まぐれな皇帝は突如キージェ中尉を無罪放免にした上、昇進させるので余は忠臣キージェに会いたいと言い出す…という話。

パーヴェル1世は名君エカチェリーナ2世の息子で、エカチェリーナ病没後に、母の地位を継承したが、生前母との間に抱えていた確執から、それまでの治世を全否定するような政策を行い、廷臣の反感を買った挙句に暗殺されるという最期を迎えており、一般的には暗君として悪名高い。本作ではその愚昧ぶりを誇張して、まるでモンティパイソンのガンビーのようなアホに描かれている。何もそこまで、という感じもするが、恐らくソ連のブルジョア批判、旧体制批判が込められたものだろうか。

大がかりなエキストラを動員出来ない苦肉の策か、観兵式では同じ写真を合成で何枚も組み合わせて、大軍のように見せかける雑な力業に笑った。
この時代の映画故仕方ない部分もあるが、プロコフィエフの曲で有名な映画、という割には全体的に劇伴が乏しい。
皇帝は眠っていると近衛兵が幾度となく伝令し、宮殿の朝を遠景に映し、ヌルッと終わる。この辺りにも風刺を読み取る事は出来るが、功を奏したとは言い難い。

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映画を観てから組曲聴くとなるほど感あるなと思った。

プロコフィエフの音楽が好きなのでYouTubeで観てみた。架空人物キージェ中尉の他愛ない話。