たむ

ふたりのベロニカのたむのレビュー・感想・評価

ふたりのベロニカ(1991年製作の映画)
5.0
ポーランド映画は数多くの名作を作り出していますが、想像力、映像美、難解さとイメージの甘美さで一つ頭抜けた最高傑作の一本です。
キェシロフスキ監督の作品は、まだ制覇できていないので、またこの映画も何度も見直したい作品なので、個人的な想いは上下しそうですが、本当に素晴らしい映画です。
『クーリンチェ少年殺人事件』以来で5つ星つけます。

ポーランドとフランスに同じ名前と姿のベロニカを描き出す、ドッペルゲンガーものですが、1991年という時代ならではの、どこかで繋がりながら、様々なものを担っています。
国であったり、思想であったり、自由主義と共産主義であったり、二人の人生が不思議な葛藤を描き出し、それが他の映画では観たことがない表現へと昇華しています。
違う場所にいるもう一人の自分は、映画では時々出てくるモチーフです。
岩井俊二監督の『ラブレター』もそんな一本です。
本作の恐ろしいところは、単純化されていたり、明確な答えがない中で、ヨーロッパ、世界を感じさせるのです。

二人の個人が、ある一つの世界の別々の場所にいる事で、こちらに生まれていれば、あちらに生まれていれば、いや、結局何も変わらないのではないかと思ったりもする。
お互いの想像力豊かに葛藤させることで、映画しか表現できないものが立ち上がってきます。
これはことあるごとに何度でも観たい、そのたびに万華鏡のように印象が変わりそうな映画ですね。
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