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奇跡の海の708のネタバレレビュー・内容・結末

奇跡の海(1996年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ラース・フォン・トリアーのレトロスペクティブで、初めて観ました。

まるで腹話術みたいなベスと神との対話。神なんて本当に宿ってるの?精神を病んだ女が妄信的になっているだけじゃないの?「セイント・モード/狂信」の主人公みたいなヤバさを重ね合わせていましたが、ベスが犠牲になったことによってヤンが回復したラストを見ていると、あながちベスの妄信や狂信、ひとりよがりな思い込みじゃなかったのかもしれない、神はいるんじゃないかと思えてきました。もちろん、ただ偶然が重なっただけなのかもしれませんが。

愛する者のために真っ直ぐに生きているだけなのに、どんどん辛い目に遭って不幸になっていくさまは、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」でビョークが演じたセルマと重なる部分がありました。実際にベスが男と寝たのは少なくて、ほとんどが未遂や手コキではあるものの、ヤンひと筋のベスにとってヤン以外の男に触れる(or 触れられる)こと自体が穢れ。だけど、ヤンのために娼婦のような格好までして男を誘うという行動は、まるで度を超えたお百度参りのような苦行のようにも思えました。究極の祈りであり、究極の愛です。

村人たちから地獄へ送り出すような埋葬をされる直前で、ヤンと仲間たちがベスの亡骸を棺から救い出して海へと埋葬した翌朝、天空で鐘が鳴り響くラストシーンは幻想的で、ベスが報われたように思えました。ずーっと重かっただけに、ちょっとだけ心が軽くなりました。泣きました。

Tレックス、ディープ・パープル、プロコル・ハルム、エルトン・ジョン、レナード・コーエン、ロキシー・ミュージック、デヴィッド・ボウイなどなど、チャプターが移り変わるときに荒涼とした風景のバックで流れる60&70年代のブリティッシュロックの選曲が素晴らしいです。

それにしても、トリアーの作品に出る女優は本当にひどい目に遭わされるよなぁ。
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