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奇跡の海のsatchanのネタバレレビュー・内容・結末

奇跡の海(1996年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

 『レッド・ドラゴン 』では目の見えない女性役、『博士と彼女のセオリー』ではジェーンの母親役を演じていたエミリー・ワトソンの映画デビュー作品。デビュー作で、アカデミー賞主演女優賞ノミネートされているなんて!
 スコットランドが舞台で、海が見える丘、田舎で教会と共に生きている人々、油田で働きに出稼ぎに行く男性など、独特の空気が流れる映画。セピア色まではいかないけれど、古ぼけた感じの淡い色の映像で、Chapter 1から物語が始まり、各章にタイトルがあるので、次に始まるストーリーの流れを予測できます。
 エミリー・ワトソンが演じているベスは、結構、強烈な役で驚きの連続でした。時々ヒステリーを起こしてしまう純真な女性…純真というよりは感情に率直と言うべきかな。そんなベスが油田で働くヤンという男性と結婚するところから始まります。ヤン役は、『レイルウェイ 運命の旅路』でコリン・ファースの軍友フィンレイや『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でランボー教授を演じていたステラン・スカルスガルド。この最愛の夫ヤンが油田の事故で、怪我して寝たきりになってしまうのです。ベスは懸命の看護と神への祈りを続けます。自分自身の祈りと、告解を聞く神のセリフを一人二役で唱えるベスが印象的でした。人の祈りや、神の答えって、自分自身が出しているのかも、と思いました。
 この映画の衝撃的なところは、下半身が動かなくなってしまったヤンが、未亡人のような服装をしていないで、他の男性と関係を持つようにと、ベスを諭すところ。ヤンの言葉通り、他の男性と関係を持つたびに、ヤンの病状が快方へ向かっているとベスは信じているのです。ベスを思いやる医師リチャードソンや義理の姉ドドの忠告を無視し、ベスは次第に娼婦へと身を落としていってしまいます。ヤンの言葉は、薬の副作用で意識が朦朧としているためだったかもしれないというのに。
 ヤンの病状が悪化し、危篤状態になったため、ベスはさらに危険を冒してヤンを救おうとします。これって、キリスト教的な考え方なのでしょうか。自分を犠牲にして他者を救う…ちょっと方向性は違うけれど、三浦綾子さんの「塩狩峠」みたいな。何故か、ラストでヤンは復活してしまうところが、私にとっては理解不能。しかも、ベスは亡くなってしまう。そして、長老たちの教えでは、教会を追放されたベスは葬られた後、地獄に落ちることになっている。だからかな、ベスの遺体を地中に埋葬せずに水葬するんだけど、翌朝、空に教会の鐘が鳴り響く。ちょっと『ルルドの泉』を思い出しました。これが奇跡なわけ⁇「奇跡」は邦題でついているだけですが、感動はできませんでした。原題はBreaking the waves。砕け散る波といったところかな、その方が納得できるかも。自分を見失ってしまっているようで、この愛の形は共感できないです。
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