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荒野の決闘のSariのレビュー・感想・評価

荒野の決闘(1946年製作の映画)
4.0
ジョン・フォード監督の『駅馬車』と並ぶ西部劇の古典。

1881年10月26日に起きた「OK牧場の銃撃戦」(ワイアット・アープ対クラントン一家)という西部開拓史上に名高い事件を題材にした物語。

メキシコからカリフォルニアへ牛を運んでいた途中、アリゾナのトゥームストンへ立ち寄った主人公ワイアット・アープら4兄弟。だが、留守をまかせていた末弟は何者かに殺され、牛も盗まれてしまった。クラントン一家がその犯人であると踏んだワイアットは、保安官となってトゥームストンに留まる事を決意する。町では賭博師ドク・ホリデイと知り合い、次第に友情を深めていく。酷い咳をしているドクは結核を患っていた。ドクの元婚約者クレメンタインという名の美しい婦人に一目惚れするワイアット。やがて、ドクの愛人チワワが、殺された末弟のペンダントを持っていた事が発覚。それはクラントンの息子に貰った事が判明…。

◾️
ジョン・フォード監督の最も美しい芸術的な映画と評価されている。どのカットも絵画のような構図で、画面の奥行きに魅了され、(一つの画面の中に幾つもの構図を創り出す方法)この奥行きを作り出す技術が、戦後の時代ではかなり困難だったようでジョン・フォード監督の画作りの凄さを感じる。
映画の舞台はアリゾナ州だが、フォード監督のお気に入りであったというモニュメント・ヴァレーでの岩山が背後に点在する見事な景観が印象に残る。

邦題から想像するような派手な銃撃シーン、所謂ドンパチシーンは意外にも殆ど出てこず、馬が逃げ回る牧場での撃ち合う、ラスト近くのシーンのみである。

OK牧場の事件の史実を改変して描かれており、主人公ワイアット、元医者であり今は結核を患うドク、美しいクレメンタイン、踊り子の愛人チワワ。彼らの4角関係の恋愛が主に描かれる、人間模様が面白い。

ヘンリー・フォンダの代表作として知られ、演じるワイアットという寡黙な男が、美しいクレメンタインに想いを寄せる繊細な心理描写が印象に残る。このクレメンタインという女性は実在せず、テーマ曲「愛しのクレメンタイン」を使用したいがために、登場させたキャラクターだという。
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