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小早川家の秋のSariのレビュー・感想・評価

小早川家の秋(1961年製作の映画)
4.3
道楽者の老人の放蕩ぶりと、そんな彼に一喜一憂する家族の姿を描いた小津安二郎監督晩年の秀作。

本作は、役者の動作から座り方まで、細部にわたって計算し尽くされた様式美が特徴である。そして、印象的なラストでは、異様なまでに死の匂いが立ち込め、黛敏郎の不穏な音楽が約11分にわたって葬送のシーンを演出している。

"まあ死んでも、せんぐりせんぐり産まれてくるわ" "ほんまよう出来てあるわ”という笠智衆と望月優子演じる夫婦の宗教的な対話や、煙や墓石、カラスなどの象徴的な描写の中にも、小津監督の死生観が強烈に表現されている。
本作は、小津監督が死を身近に捉えるようになった晩年の作品であり、その死生観を鮮烈に感じさせる。(次作『秋刀魚の味』を最後に小津監督は他界。)

本作は松竹ではなく、東宝が拠点となっているため、東宝の専属俳優たちが多く出演しており、これまでとは異なる独特の緊張感が漂っている。新珠三千代や宝田明、小林櫢、団令子、森繁久彌、白川由美、藤木悠といった東宝スターが総出演しており、貴重な一本となっている。

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他社進出三本目として小津安二郎がメガホンをとるホームドラマ。脚本は「秋日和」につづいて野田高梧と小野安二郎のコンビが執筆。撮影は「女ばかりの夜」の中井朝一。宝塚映画創立十周年記念作品でもある。昭和36年度芸術祭参加作品。
(映画.com)
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