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仕立て屋の恋のHKのレビュー・感想・評価

仕立て屋の恋(1989年製作の映画)
3.7
パトリス・ルコントの作品は何本か観ていますが、昔からタイトルに愛・恋・ラブあたりの文字が入った映画はスルーする傾向があるため本作は観ていませんでした。
でも最新作の『メグレと若い女の死』を観た際、本作も同じく原作がジョルジュ・シムノンのミステリー小説と知ったのでちょっと気になって鑑賞。
同原作は、以前デュヴィヴィエも映画化しており、本作はリメイクだそうです。

中年の仕立て屋の主人公が向かいのアパートのある若い女性の部屋を覗き続けるという、ヒッチコックの『裏窓』のピンポイント・バージョンとでもいいましょうか。
でも『裏窓』の主人公は暇つぶしの観察だしあまり変態性は感じませんでしたが、こちらは恋心故とはいえ立派なストーカー行為。こちらの主人公には前科もあるようですし。

そんな折、近くで若い女性の殺人事件が発生し、近所でも変わり者として評判の主人公は刑事から疑われます。
そしてある時、自分が覗かれていると知った女性がとった行動は・・・

若い女性の部屋から見た主人公の部屋の窓に浮かび上がる禿げ頭の白い顔が不気味。
この主人公、まだ40前なのに頭がキレイに禿げ上がっており、そのせいでどこにいても目立ちます。
でもご近所からは嫌われても、ボーリング場では神技プレイで人気者。
女性に危害を加えるわけでもなく、遠くからただ観ているだけの主人公からは言いようのない孤独感が漂います。
そして、ようやく微かな希望に向かい一歩踏み出したかに見えたところで悲劇が・・・

ラストは意表をついてアクション展開。
屋根伝いに逃げるなんて危ないからやめときなさいって、あなたどう頑張ってもジャン・ポール・ベルモンドには見えないんだから。
あ~やっぱり言わんこっちゃ・・・

自分の映画の主人公は、自分自身の一部というルコント監督ですが、どんな監督でも多かれ少なかれそうなんじゃないでしょうか。
『メグレと~』のときと同じく、地味ながらもとても丁寧に作り込んだ各シーンが印象的な作品でした。
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