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エレニの旅のsaetaのレビュー・感想・評価

エレニの旅(2004年製作の映画)
4.8
公開当時以来の2度目の鑑賞。

オデッサから引き上げて来た難民の一群が池に写し出される冒頭のシーンから目を奪われてしまった。
引き続いて、エレニが船に乗って村に帰ってくる長回しのシーンは村人達の営みを俯瞰するブリューゲルの名画「雪中の狩人」を想起した。

筏で川を下る父の遺骸、
難民が寝ぐらにしている劇場、
白いシーツがはためく「白布の丘」、
村人の怒りを表わす木に吊るされた羊達、
水没する集落、
アコーディオン奏者の夫を見送る桟橋、
場面が切り替わる合図のように横切る列車

などなど、数え上げればキリがない程の名シーンの数々。3時間近くの大作を全く飽きさせず一気に鑑賞してしまった。

生涯において一つも傑作を作れぬままの作家が多いなか、アンゲロプロスはどうしてこれだけの作品を作り続けられたのだろうか?敬服します。
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