エレニの旅の作品情報・感想・評価

「エレニの旅」に投稿された感想・評価

leyla

leylaの感想・評価

4.4
1919年から30年あまり、ロシア革命、第二次大戦、内戦と、悲劇に見舞われた続けたギリシャを舞台に、時代に翻弄されながら過酷な運命を辿ったエレニの半生を描いた作品。どこにも行き場のなくなったギリシャ人の悲劇の物語でもあります。

監督が亡くなった母のために、母が体験してきた戦争を描いた作品とのこと。ちなみに、監督は反ファシズム運動で父を亡くすという経験もあり、作品にはたびたび悲惨な歴史が描かれます。

アンゲロプロスの作品の中でも一番芸術性の高い映像だったように思いました。

長回しはいつもよりも長く、鉛色の河と空、はためく白いシーツ、筏と船の葬列、木に吊された羊など、画面の構図がいつにも増して研ぎ澄まされています。

何より圧倒されたのは、村そのものを作って水没させる映像。水没は部分的に作ったのだと思いますが、CGを使わず、妥協を許さない映像美へのこだわりが極限まで達したように思えました。

故人を乗せた筏が河を渡る、水に浸かる村、死人が横たわる河、アメリカへと続く海、あの世とこの世を隔てるかのような水の流れと横切る列車が何度も描かれ悲劇とリンクします。

台詞で多くを語らなかったエレニが、愛する人たちを亡くした果てに叫び声をあげる。言葉を越えて悲しみが伝わるラストでした。

ギリシャの戦争の歴史をギリシャ神話の隠喩を用いて描いた、アンゲロプロスの故郷への愛と戦争への憎しみが込められた作品。
3時間近くあるので、アンゲロプロス好きの方でないと退屈かもしれないです。
テオ・アンゲロプロス監督作。
第二次大戦、ギリシャ内戦と云う激動の時代を生きた、一人の女性の半生を綴った物語。
未完の「20世紀三部作」の第一作となる作品ではあるが、社会の荒波の中で、個人では如何にしようも無い運命を丁寧に描いた作品。

物語はロシア革命時、黒海沿岸の都市オデッサを追われた人々がギリシャへ戻り、自らの移住地へ疲れた足取りで移動する姿から始まる。
曇天と大河の川面がその鈍色の境界を溶け合わせる中で、影の様な人の群れが向かって来る非常にシンボリックなショットであり、この孤独感、寂寥感、そして疎外感が本作全体に通底してゆく事となる。

「アンゲロプロスと言えば」と問われれば大方の人がそう答える様に、本作もギリシャの政情に翻弄される人々を特徴ある長回しで写した作品群に分類される。

彼の長回しは『こうのとり…』に於ける川向うから湧き出る人々や電柱上の黄色い雨合羽、『霧の中の風景』での霧中の一本の木等、シュールレアリスムを思わせる叙情的且つ象徴的で絵画的な止め絵が特徴となるが、本作に於いてもそれは健在で、随所に挿し込まれる事によって、より人物達の心情の機微や事象の推移を鑑賞者に想像させる事に成功している。

本作は一人の女性の半生を通じ、ギリシャ社会に於ける貧困と格差、個集団の独自的近親婚、夜警国家化、不安定な政権と外国との関係性等、諸問題が個人に落とす暗い影を拾い上げた作品ではあるが、それ等を直接傍目から批判的に取り上げるのでは無く、飽くまで主人公エレニの悲劇的半生に焦点を当て、それを追う事に終始している。
このスタンスによって我々は、より彼女に感情の移入を来たし、彼女同様無力感に苛まされ、真摯に諸問題を「自分に起きた事として」考慮して行く。
そしてこの体験は「彼女の悲劇をも自己の悲劇として受け止めて行く」と云う事をも意味し、鑑賞者の心的負担、重みとトレードオフされる事ともなる。

アンゲロプロス作品に通底するこの「重み」を「映像体験」と捉えるか否かは鑑賞者次第ではあるが、長尺である事と併せ、鑑賞前にある程度の心構えが必要となる作品である。
Ty

Tyの感想・評価

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アンゲロプロスの映画を観る上で、ショット等々の素晴らしさをみること以上にそこに叙述されている歴史をみなくてはならないという気がしてきた。
幼い頃からずっと難民として生きてきた主人公エレニ。難民たちで成り立っている村から恋人と共に抜け出し、愛する人たちとの出会いや別れを経験しながら旅をする壮大な大河ドラマ。

ギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロス監督の手腕が唸る大作。大作と言ってもハリウッドのようなものではなく、これと言ったインパクトのある展開はほぼ無くて、芸術的なアプローチで見せきる作品になっています。

長回しの場面が多く、それがまた緻密に計算された美しさと印象深さに満ちていました。冒頭の霧の中を歩く難民たち。ボートで水没した村からの脱出。白いシーツの波からの整列する音楽団。よくこんなシーン撮れたなと思うほど見入ってしまう場面がいくつも用意されています。

エレニと夫のアレクシス。そして双子の息子の4人家族の姿を通じてロシア革命、第二次世界大戦、ギリシャの内戦など激動の歴史を辿ります。

そんな動乱の嵐に翻弄されたエレニ。彼女の苦しみは物語が進む度に深くなる一方。終盤は見てるのもメチャクチャ辛くなるほど。今も昔も彼女のような運命を辿った人は沢山いたはず。そういった境遇の人々と比べたら今の自分の悩みなんか本当にちっぽけなものだと思い知らされました。

終始暗くて、とても明るい気分になれるような作品ではありません。3時間近くの長編ということもあり、見るにはそれなりの気持ちが必要ですが、映画ファンの方なら間違いなく一見の価値はある作品でしょう。
これは未見だった。映像はいつもながら圧倒的。前半は文句なしに素晴らしい。後半の展開がだいぶ凡庸かつ説明的でスピルバーグみたい。評価に困る。
実際に村を水に沈める徹底的なアナログ志向と登場人物たちの動きを凝視する長回しが印象的。モンタージュの否定によって作られた映像は独特な空間を作り出していて、演劇的な雰囲気。最初のスピロスがこちらに語りかける長回しも演劇的で、これから個人の話と共にギリシアの共同体の話が始まっていくんだなという始まり方。
sugar

sugarの感想・評価

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どこまでも美しく、どこまでも静かでどこまでも猟奇的。

テオの作品は作中1回くらいああいうシーンが差し込まれるのわかってるから免疫ついてきた。役者の目線が上を向いていたら要注意。

続編があるのがわかってるので、そこまで絶望にはならなかったな。しかしやっぱり永遠と一日が自分の中では最上位。
あぺ

あぺの感想・評価

4.5
物語の文脈に感動したり、演出、編集に感動したりすることはよくあるけど、ショットそのものの美しさに感動できる映画は中々ないはず。本作というかテオの作品全体的にショットそのものに感動できるのだから映画として究極なんだろう。
kaksep

kaksepの感想・評価

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効果音のバランスと相性が悪く 積み重ねられる長回しを考えてのことかもしれないが 何度も中断してしまった
恐ろしく美しかったけど 集中できず

富井

富井の感想・評価

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風景のような人々が、美しくも不気味

幻想的な楽器隊のシーンの数々が素敵やん

兄弟関係
汚れひとつない白いシーツ
最後のダンス
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